517.会計によるリスク管理法⑧ 借入金

2021年6月5日

リスク管理観点から会計を捉えるシリーズ第8回 借入金

 

 オリンピック・パラリンピック開催に対しても大きな影響を与えている新型コロナ感染ですが、

経営に対してもどのような悪影響をもたらすのか予測することは難しく、いま、守りの経営への舵取りが重要となっています。

「リスク管理観点から会計を捉えるシリーズ」の今回は、リスク管理の中でも重要といわれている借入金のリスク管理です。

 

1 借入金とは

(1)一般的には金融機関から受けている「融資」のこと

 返済期間が1年以内であれば「短期借入金」として分類され、流動負債として記載されます。

返済期間が1年を超えるものであれば「長期借入金」として分類され、固定負債として記載されます。

ただし、そのうち1年以内に返済する金額は、経営管理上、流動負債として「1年以内返済長期借入金」として記載するように、

会計規則上も求められています。

 

 なお、役員借入金はこの短期借入金・長期借入金には含まれません。

固定負債に表示はされてはいますが、どちらかといえば、好意的に見れば自己資本的に評価されます。

他方、自己資本的に評価されても、オーナー自らが資金提供をしないといけないほど経営が苦しいのかと思われ、

あまりいい評価には結びつかない場合もあります。

さらにそんな勘繰りを避けるために「役員借入金」という勘定科目は使用せず、「長期未払金」などで表記する場合もありますが、

実態は同じです。

 

(2)借入金の運用目的

 借入金はいろいろな目的で借り入れるわけですが、大きくは2つに分けられます。

1.運転資金

 ひとつは賞与資金や納税資金など、日頃の経営資金として借入することが考えられます。

このような目的のことを「運転資金」といい、このような使用目的は半年に一度、年に一度あるわけですから、

返済もそれまでにすることが求められます。

したがって1年以内に返済すること条件に融資を受けることが多くなりますから、「短期借入金」になる場合が多いと思われます。

また借入期間が短いので、支払金利も高くなります。

2.設備資金

 もうひとつは固定資産の購入など、設備投資用資金として借入することが考えられます。

このような目的のことを「設備資金」といいますが、設備の運用期間は長く、また借入額も大きくなる場合が多いので

長期にわたる返済期間となります。

したがって、1年を超える返済期間で融資を受けることが多くなりますので、「長期借入金」になる場合が多いと思われます。

 

(3)「借入金」はマイナスイメージばかりではなくプラスイメージもある

 借入金は資金繰りが立たなくなると借り入れるイメージがあるため、多くの場合は「負」のイメージとして捉えがちですが、

本来は、ビジネスのチャンスがそこにあるのに、それに対する資金がないという、もっと前向きでプラスイメージのものでも

あります。

したがって、しっかりしたマネジメントのもとでの借入金は「事業に積極的である」というプラス評価を受けることもあります。

 

 しかしいずれにしても返済できないと、銀行との関係がギクシャクとした関係になりますので、経営リスクを招く元にもなり、

その管理はしっかりしなくてなりません。

 

 

2 「借入金」のリスク管理

 では、そんな「借入金のリスク管理」をどのように考えればよいのでしょうか?

それは大きく分けて、返済の状況と借入自体の額に分けて考えられます。

 

(1)借入金の返済状況に余裕があるのか?

 借入金の返済はどこからされるのでしょうか?

普通はその都度、返済金を現金で持参するのではなく、銀行口座を通じて引き落とされることになります。

 

 余談になりますが、とある金融機関から融資を受けると、その融資額は必ずその金融機関の口座に振り込まれることになります。

仮にそれまでに付き合いがなく、口座を持っていない場合は、口座を開設してそこに振り込まれることになります。

 なぜだか、わかりますか?

それは金融機関にとって、新しい取引先を増やすという意味もありますが、その重大な意味は融資先企業の返済の様子が見える

ということなのです。

 

 そのことから考えると、融資を受けた金融機関の口座にどれだけの預金残高があるのかということは、重要なリスク管理と

なります。それは預金残高と月間返済金額を比較して見ます。

 返済余裕係数 = 融資金融機関の預金高 ÷ 月間返済金額

できれば、この「返済余裕係数」は最低でも3回返済分以上あり、徐々に増えていくことが望ましいといえます。

 

(2)借入金のボリューム ー借入依存企業体質の有無ー

 次のリスク管理は、企業としての借入金に対する依存体質度です。これには次のふたつの観点からチェックします。

 

1.借入金対平均月商倍率 = 借入金(短期+長期) ÷ 平均月商

コロナ以前は「3倍」までが適正ともいわれていましたが、いまはずいぶんと緩くなっているようです。

とはいっても、年商と同程度の借入金は立派な「借入金依存体質」です。

 

〔ここでひと言!〕

 なぜ、「3倍」までが適正といわれていたのでしょうか? その考え方は以下のとおりです。

事業を営む以上、経常利益率は10%以上確保することが推奨されています。

そしてその半分を納税と内部留保へ回すと考えると、借入金返済に回せるのは最大、売上高の5%ということになります。

借入金の平均返済期間は5年といわれていますので、5年×12カ月で平均返済期間は60カ月となります。

そうすると、1回あたり返済に回せるのは最大、売上高の5%ですから、60カ月をかけると300%、つまり3ヵ月分となり、

「借入金の限度額は平均月商の3ヵ月分まで」となるわけです。

 

 現在は、コロナ禍で返済期間は伸びていますので、借入金の限度額は大きくなったと言われていますが、

それでもMAX12カ月程度であろうと思われます。

 

2.借入金返済期間予測(債務償還年数) = 借入金(短期+長期) ÷ (経常利益+減価償却費)

 借入金の返済はどこからするのでしょうか?

借入利息は損益計算書の中で計算されていますが、返済額は損益計算書の中では計算されていません。

返済は預金から引落しされ、借入金残高もその分、減少することになります。

 その預金の元は何でしょうか?

そうです、「利益」なのです。

ただ、利益は減価償却費を差引されていますが、おカネ的には減価償却費は払いません。

ですから、最大の返済原資は「利益+減価償却費」となります。

 そして、返済期間予測は最大限で考えます。

つまり、利益で得たおカネ全額で借入金を返済するという考え方です。(実際には納税や留保も必要ですが、それは考えません。)

これで借入金残高を割れば、「今年の利益であれば、何年間で返済できる」という試算ができます。

これが10年以上になれば、借入のし過ぎ、立派な「借入金依存体質」ということです。

なぜなら、10年以上先のことは、企業の存続自体がわからないからです。

ですから、この借入返済期間予測は5~6年程度には収めたいものです。

 

 この算式からもわかりますように、経常利益が赤字なんていうことが、借入金企業にあってはならないということが

よくわかると思います。

 

 

つづく・・

 

戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いの外、『思い込み』に囚われて生活や仕事をしています。

そしてその結果が「いまである」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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