601.収益改善 マズローの法則

2023年1月22日

コスト高などによりますます経営環境は厳しくなっています。

そのような中で取り組むべき経営改善は「収益の改善」です。

何故なら事業を継続させていくうえで「黒字経営」は必須条件だからです。

では、収益改善策として考えられることは、何なのでしょうか。

一般的には ①売上のアップ ②原価率の低減 ③コストの削減 の3点に分けられます。

売上が増えて、原価率が下げられ、コストも抑えられれば、黒字経営が維持できやすくなるからです。

収益改善策は売上のアップ、原価率の低減、コストの削減の3点!

 

しかし、そこに抜けているものが一つあります。 それは人である「従業員」に対するモチベーションアップです。

売上を増やすのも、原価率を抑えるのも、そしてコストを削減するのも、その担い手はすべて従業員だからです。

従業員がその気になってくれないと、いくら旗を振っても「収益改善」を実現することは出来ません。

肝心なのは従業員のモチベーションアップ!

 

しかしそこで経営者がよく行う手立ては、従業員が言うことを聞かないので「型」にはめようとすることです。

従業員が思いとおりに動かないので、「行動指針」「マニュアル」「型」など、言い方はいろいろありますが、

動いてくれないのなら「行動基準」を示して、そのように動かそうということです。

よく行われる間違いは「モチベーションアップ」ではなく「型」にはめようとすること!

 

そうすると、どうなるのでしょうか?

まず管理職はトップの目を常に意識するようになり、部下がその型どおりに動いているのかだけを見るようになります。

本来、管理職は部下が成果を上げやすいように支援することがその役割なのですが、

ただそのとおりに動いているのかを注視するようになります。

なぜなら、それが自分の評価につながるからです。

そうすると、誰も一線で働く従業員のことを考えない保守的な組織風土になっていき、常にトップを見ているだけで、

顧客のことを考えた創意工夫なども考えなくなってしまいます。

すると今度は、「もう少し考えて仕事をしろうよ」というトップの愚痴に結び付いて行きます。

このようなことが実は多くの企業の中で繰り返し行われており、創業当時の自由闊達だった組織風土がいつのまにか、

活力のない、常に上司を見るだけの組織風洞に変って行きます。

型にはめる経営は思考停止につながります!

 

そこで考えるべきことは「なぜ、トップが思うような使命感を持ちながら溌溂と働いてくれないのか」ということです。

 

それはいみじくも、いまや行動心理学の古典となっている「マズローの法則」が明確に説明してくれています。

マズロー(1908~1970)は米国心理学者であり、人間の欲求は5段階からなると結論付け、

マズローの欲求5段階説や自己実現理論などとも呼ばれる「マズローの法則」を提唱しました。

マズローの法則によれば、

人間の欲求には「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5段階があり、

これら5つの欲求はピラミッド型の序列を成しており、低次の欲求が満たされるごとにもう1つ上の欲求を持つようになる

というものです。

マズローの法則は「低次の欲求が満たされれば高次な欲求を持つようになる」がポイント!

 

図示すると、下図ようなイメージです。

1 「生理的欲求」とは、ピラミッドの最下層にあり、最も基本的な欲求のことをいいます。

具体的には生命活動を維持するために不可欠な必要最低限の欲求を指し、いわゆる「3大欲求」(食欲・睡眠欲・性欲)のほか、

呼吸をしたい、排せつをしたい、水を飲みたいなどの欲求も、生理的欲求に該当します。

ここはほとんどの企業では満たされていると思います。問題は次の段階です。

 

2 その上にある階層は「安全の欲求」です。

安全の欲求とは身体的に安全でかつ経済的にも安定した環境で暮らしたいという欲求です。

企業の現場でいえば、職場環境であり、給与水準です。

快適なオフィス環境を提供できているのは大企業だけであって、中小企業では実現できていません。

さらに給与水準となると、低賃金しか支払えない中小企業が数多くあります。

ここで大事なことは一流企業と同じオフィス環境を提供することや同じ給与水準にすることではなく、

まず、その姿勢を見せることです。

まず「顧客・社会の為に~しよう」ではなく、

まず「少ないかもわからないけれど待遇を改善する。だからこの方向でこうして行こう」という姿勢です。

対外的な経営方針を掲げる企業は多くあるが、社内的な経営方針を上げる企業は多くない!

 

3 第3の階層のは「社会的欲求」です。

社会的欲求とは、家族や組織など何らかの社会集団に所属して、安心感を得たいという欲求のことです。

これは企業でいえば役職であったり、ポジションと給与によるプライドです。

こうなってくると、他者への働き掛けというモチベーションも芽生えて来ます。

いくらオフィス環境や給与水準が改善されても、認められているという実感が伴わないと社会的欲求は満たされません。

私たちが健やかに日々を暮らしていくためには、物質的満足だけでなく、自分を受け入れてくれる親密な他者の存在が不可欠

であるということです。

物質的満足だけでなく、自分を受け入れてくれる親密な他者の存在が不可欠!

 

4 第4の階層は「承認欲求」です。

承認欲求とは、所属する集団の中で高く評価されたい、自分の能力を認められたい、という欲求です。

具体的には課長や部長などの上級ポジションです。

高位の承認欲求は、他者依存的な評価軸から自立し、あくまで自分の中で立てた基準や目標にしたがった欲求です。

高位の役職(ポジション)は能動的な活動を誘発する!

 

5 最上級の第5階層は「自己実現の欲求」です。

自己実現の欲求とは、自分にしかできないことを成し遂げたい、自分らしく生きていきたいという欲求です。

企業の中でいえば、経営者あるいはビジネスパートナー的な役員層ということになります。

もっとも最近では、そんな気概を持った役員層も少なくなったと言われていなくもないですが、

それはその企業固有の問題であり、まさしくオーナーの資質問題です。

 

6 最後にマズローは晩年さらにもう1段階の高次元な欲求をピラミッドに付け加えています。

その6段階目の階層とは「自己超越の欲求」と呼ばれるものです。

自己超越の欲求とは「社会をより良いものにしたい」「世界の貧困問題をなくしたい」など、よくオーナー経営者が掲げる

自分のエゴを超えたレベルでの理念を実現したいという欲求です。

一見、自己実現の欲求と似ていますが、両者は根本的に異なります。

自己実現の欲求は「理想的な自分になりたい」と自分へベクトルが向いていますが、

自己超越の欲求は、他者や社会など、自分の外にあるものに対する貢献が志向されているのです。

但し、それを同様に部下に求めても仕方ありません。経営者と従業員では立ち位置が違うからです。

立ち位置が違うのに従業員に同じことを求めるオーナー経営者が実に多い!

 

したがって、従業員ともに「経営改善」を行うには、まずはモチベーションアップをすることが先決です。

経営改善の第一歩は従業員の「モチベーションアップ」です!