159.マーケティング 数値で現状を掴む

2014年3月11日

第10話 数値で会社の現状を掴む

経営戦略を考えるにあたっては外部環境分析と内部環境分析をしなければならないことは「経営戦略策定のプロセス」で示したとおりだ。外部環境分析はマクロ環境・競合・マーケットの分析から成ることは説明したが、内部環境分析は財務・人材・組織の分析から成る。今回は数値で会社の現状を掴む方法を紹介する。

 

1.数値で会社の現状を掴むとは

数値で会社の現状を掴むとは、「会計」で財務状況を掴むことにほかならない。したがって会計は決算・申告だけのためではなく、「会計は経営のために非常に重要な業務である」という認識を持ちたい。そこで大事なことはふたつ。

(1)会社と経営者家計を完全に分離する
多くの会計事務所は顧問先のニーズが節税にあるという固定観念に縛られているため、会社と経営者の家計をごっちゃにして節税という名の下の指導をしている。そのため中小企業の財務諸表(月次試算表・決算書)の多くは会社の実態を表していない。たとえば経営者の妻や子供を従業員にして給与を支払い節税するとか、赤字にして法人税の支払いを免れるなどだ。
したがって、会社と経営者家計を分離することが重要だ。

(2)申告だけを前提とした税務会計の指導しかしていない(企業会計原則などを守っていない)
特に資産・負債の流動性と固定性の区分がきちんとなされていなかったり、損益の経費管理があまりにも大雑把すぎてまったく収益管理に使えなかったり、さらにはでたらめなキャッシュフロー計算書しか作成していなかったりあるいは作成すらしていなかったりだ。

この様な状況では、会計で会社の現状・財務状況を掴むことはできない。

 

2.財務分析で自社の状況を掴む

そのような問題がないという前提で、ではどのように会社の状況を掴めばよいのだろうか。

(1)自社の健康状況を知る
自社の健康状況(財務体質)を知る上で重要な指標は次のとおりである。
①総資本営業利益率
 会社で運用している総資金(総資本)で何%の利益をあげているか。すくなければ事業モデルを改善しなくてはならない。
②自己資本比率
 会社で運用している総資本のうちの自己資本の割合である。根本的な会社の安全性を表す。
③手元流動性比率
 現預金と平均月商の比較だ。当座の資金状況を表す。
④当座比率
 現預金+売上債権と1年以内の支払額(流動負債)との比較だ。当座の支払能力・余力を表す。
⑤売上債権回転期間
 何日分の売上高に相当する売上債権があるかということだ。翌月回収なら30日前後であるはずだ。
⑥棚卸回転期間
 何日分の売上高に相当する在庫があるかということだ。多く抱えていることは基本的にデッドストックが多いことを表す。
⑦借入金対月商倍率
 何ヶ月分の売上高に相当する借入金があるかということだ。売上高3ヶ月分以内が基本だ。
⑧債務償還年数
 借入金が最短何年間で返済できるかということだ。MAX10年以内が基本だ。

(2)自社の収益力を知る
自社の収益状況(収益構造)を知る上で重要な指標は次のとおりである。
①対前年売上高伸び率
 会社が順調であれば経費は年々多くなるものである。したがって売上高も毎年伸びていなければならない。
②売上総利益率
 いわゆる粗利益である。これが人件費・経費支払いの原資だ。業種業態によって標準売上総利益率というものがある。
③営業利益率
 営業利益は必ず黒字でなければならない。かつ目指すべき営業利益率は業種業態に関わらず10%だ。
④経営安全率(100-損益分岐点比率)
 何%売上高が減っても赤字にならないかという割合だ。目標は30%以上、損益分岐点比率でいえば70%以下だ。
⑤労働分配率
 粗利益に対する人件費の割合だ。人件費は高く、労働分配率は低く、50%以下には抑えたいものだ。

このぐらいは会計で押さえておきたいものだ。