709.簿記の仕組み⑧ 仕訳2 消費税

2025年5月31日

2 消費税

(1)『消費税』の会計処理は「税抜経理」が基本

 消費税に関する会計処理は「税抜経理」が基本だ。

 その理由は税込経理では売上高も仕入高も経費もすべて10%増に見えるので、経営判断を誤るおそれがあるからだ。

 小規模事業だから「税抜経理は必要ない」とか「税抜経理は大変だ」いう意見もあるが、小規模事業だからこそ「10%」の

 影響は大きく、少し手間がかかっても価値がある管理業務だと言える。

 したがって、簡易課税事業者はもちろんのこと、免税事業者であっても『税抜経理』が望ましいと思われる。

消費税の経理は『税抜経理』が基本!

 

(2)売上・仕入・経費などに消費税はかかる

 会計ソフトを用いて税抜経理をすると、次のようになる。

 1.売上高の計上     売掛金       11,000円  / 売上高       11,000円

  すると会計ソフトでは次のように展開される。

               売掛金       11,000円  / 売上高        10,000円

                             仮受消費税     1,000円

 2.仕入高の計上     商品仕入     5,500円  / 買掛金          5,500円

  すると会計ソフトでは次のように展開される。

               商品仕入         5,000円  / 買掛金   5,000円

               仮払消費税     500円

 3.経費の計上      水道光熱費 2,200円  / 未払費用     2,200円

  すると会計ソフトでは次のように展開される。

               水道光熱費 2,000円 / 未払費用     2,200円

               仮払消費税     200円

 

(3)税抜経理をすることで常に本来の売上高・仕入高・経費がわかる

 上記の例では、

 1.税抜経理の場合             2.税込経理の場合

 ①売上高     10,000円         ①売上高     11,000円

 ②仕入高       5,000円         ②仕入高       5,500円

 ③水道光熱費     2,000円         ③水道光熱費     2,200円

 ④利益        3,000円         ④利益        3,300円

 ⑤売掛金     11,000円         ⑤売掛金     11,000円

 ⑥仮払消費税     700円         ⑥仮払消費税     ナシ   

 ⑦買掛金       5,500円         ⑦買掛金       5,500円

 ⑧未払費用      2,200円         ⑧未払費用         2,200円

 ⑧仮受消費税     1,000円         ⑨仮受消費税       ナシ

 *仮払消費税とは、取引先に消費税を納付するまで仮払いしている消費税という意味であり、

  仮受消費税とは、得意先から消費税を納付するまで仮受けしている消費税という意味である。

 以上のように、税込経理の損益計算書では、すべてが10%膨らみ、業績がより良いように見える。

 

(4)税抜経理をしていると納付すべき消費税額の概算もわかる

 このように税抜経理をしていると、納付すべき消費税額もだいたい把握できるようになる。

 1.本則課税の場合

 本則課税であれば、納付額は『仮受消費税-仮払消費税』で求める。

 したがって、上記の例では、「仮受消費税1,000円ー仮払消費税700円」となるので、だいだい『300円』となる。

本則の場合は『仮受消費税ー仮払消費税』で消費税額が試算できる

 2.簡易課税

 簡易課税であれば、業種ごとに『みなし仕入れ率』というものが決まっているので、

 納付額は「仮受消費税×(100%-みなし仕入れ率」で求められる。

 上記の例で、仮に第四種事業の飲食業であったとすれば、みなし仕入れ率は『60%』なので、

 「仮受消費税1,000円×(100%ー60%)」となり、納付額は400円となる。

 この場合であれば、この飲食業は本則課税では300円になるので、本則課税で消費税申告した方が有利になることがわかる。

簡易の場合は『仮受消費税×(100%-みなし仕入れ率)』で消費税額が試算できる

 

(5)消費税で注意すべき勘定科目

 1.人件費科目

 役員報酬や給料手当、法定福利費、福利厚生費などの人件費科目は、すべて消費税は『非課税』となる。

 2.新聞購読料など

 新聞購読料は『軽減税率』が適用されるので、消費税率『8%』となる。

 その他、食料品なども軽減税率が適用される。

 3.受取利息・支払利息、受取配当金など

 利息や配当金は、すべて『非課税』となる。

 *正確には受取・支払利息は『非課税』、受取配当金は『税外』のようだが、我々は両者とも非課税と理解していいと思われる。

 

(6)国税の消費税と地方消費税

 「消費税率は10%」と思っているが、

 正しくは『国の消費税率が7.8%』、『地方消費税率が2.2%』であり、合わせて10%になっている。

 したがって、消費税の申告計算は、国税の消費税と地方消費税に分けて、計算する必要がある。

消費税は国の消費税率が7.8%、地方消費税率は2.2%、合わせて10%!

 

 1.簡易課税の場合の計算

 たとえば、売上高4,400万円 小売業(みなし仕入率80%)の場合

 ■売上にかかる国税の消費税額の計算

 ・税抜の売上高を求める        4,400万円(税込)÷110%=4,000万円(税抜)

 ・国税の預り消費税額を求める     4,000万円(税抜)×7.8%(国税)=3,120,000円

 ・仕入にかかる仮払消費税額を求める  3,120,000円×80%=2,496,000円

 ・国税の消費税納付額を求める     3,120,000円-2,496,000円=624,000円

 ・地方消費税納付額額を求める     624,000円×22/78=176,000円

 ・納付税額合計            624,000円+176,000円=800,000円

  *消費税額の計算は、先に国税分(7.8%)を求め、次に地方税分(2.2%)を求め、最後に国税と地方税を合計して

   納付税額を求める。

 2.本則課税の場合の計算

 売上に対する消費税額から、仕入に対する消費税額を差し引いて納付税額を求める。

 ・消費税の納付税額 = 売上の消費税額- 仕入の消費税額

 ・そのうち、78%が国の消費税納付額、22%が地方消費税納付額となる。

 

(7)中間納付

 中間納付とは、前年の消費税納付額が48万円を超えた場合に、税務署から送付されてくる事業年度の中間に送付されてくる

 消費税納付額である。

 但し、48万円の対象は国の消費税額だけで、地方消費税は入らない。

中間納付は前年国の消費税額だけで48万円を超えた場合に税務署からの納付通知書が来る

 

 なお、仕訳は以下のとおりとなる。

 1.税抜経理の場合

 ・中間納付で100万円の消費税を納付した

   仮払金   1,000,000円  /  預金     1,000,000円  摘要:中間納付

 ・決算で確定納付額が1,000,000円と判明し、仮払消費税3,000,000円、仮受消費税5,000,000円であった

   仮受消費税 5,000,000円  /  仮払消費税  3,000,000円

                     仮払金    1,000,000円  摘要:中間納付

                     未払消費税  1,000,000円  摘要:確定納付額

  *仮受消費税との差額がある場合は、その差額を「雑収入」に計上する。

 

 2.税込経理の場合

 ・中間納付で100万円の消費税を納付した

   租税公課  1,000,000円  /  預金     1,000,000円  摘要:中間納付

 ・決算で確定納付額が1,000,000円と判明した

   租税公課  1,000,000円  /  未払消費税  1,000,000円  摘要:確定納付額

  *税込経理の場合は、決算時の税抜経理のような精算仕訳はない。