415.図解 事業戦略策定 31

2019年5月31日

事業戦略策定第31回は『新規投入の価格設定 ペネトレーションとスキミング』です。

商売で重要な要素の一つとして、「価格設定」があげられます。

価格や料金の設定によって、売上高は大きく左右され、さらに資金繰りも大きく左右されることになります。

今回は、そんな価格設定についての考え方を紹介します。

なお、前提企業が、製造業や小売業における新しい製品商品を販売開始するときのように思われるかもしれませんが、

決してそのような場合だけではなく、広く価格を考える際に知っておくと非常に参考となる考え方です。

 

1 考え方は 二通り ある

価格設定を考える際に考えるべきは、その「価格の目的」です。

広く買われる価格を意識するのか、それとも自社の資金状態を鑑みて資金重視に考えるのか、です。

広く買われるということは、市場の浸透を考えるということですから、ペネトレーション(Penetretion)と言います。

一方、資金重視ということは、サッと購入させたいということですから、スキミング(Skimming)と言います。

最近、スキミングという言葉は、ネットで個人情報や暗証番号など盗み取るという意味で使われますので、チョッとピンと来ない

かもわかりませんね。

 

2 ペネトレーション プライシング

(1)ペネトレーション・プライシング とは

この考え方の前提は、売れれば売れるほど経験曲線や生産ラインの稼働率があがり、1個当たりのコストは下がるということです。

例えば、自社で生産しなくとも、大量仕入れできれば、単位原価は下げられます。

サービス業でも注文が増えれば増えるほど、経験曲線によるスキルアップやそれによる時間短縮、あるいはスケジューリングなどで

効率は上げられることになります。

あらゆる業種で売れれば売れるほど、オーダーが増えれば増えるほど、コストは下げられますので、それを見越して価格設定をする

考え方です。

(2)ペネトレーション・プライシング が採れる条件

ペネトレーション・プライシングが採用できる条件としては、以下のようなことがあげられます。

 ①広い潜在市場が存在すると考えられること

 ②価格の設定により需要が喚起できると思われること

 ③経験曲線により生産効率や生産品質が向上できること

(3)ペネトレーション・プライシング で期待できる効果

また、ペネトレーション効果として、次のようなことが期待できます。

 ①早い時期に市場を獲得できる可能性が芽生える

 ②粗利が低くなるので、他社の参入がしにくくなる

 ③ブランドを拡げる、確立することが可能となる

 ④大きな莫大な利益を上げることが可能となる

(4)ペネトレーション・プライシング のリスク

一方、ペネトレーション・プライシングは低価格設定しますので、次のようなリスクがあげられます。

 ①思惑とおり原価が下がるとは限らない

 ②(思ったより売れなければ・・)資金繰りが厳しくなる恐れが生じる

 

3 スキミング プライシング

(1)スキミング・プライシング とは

この考え方はともかく早く資金回収することを目的に、市場の上澄みを早くすくい取ろうということです。

したがって巨額な投資が必要なときなどに、早急に資金回収するためにとれらることが多い価格政策です。

しかし、それは大企業を前提にした一般的な説明であり、

中小・小規模企業においても、巨額な投資はともかく、一刻も早く資金繰りを改善したい場合に応用できる価格政策です。

(2)スキミング・プライシング が採れる条件

スキミング・プライシングが採用できる条件として、以下のようなことがあげられます。

 ①独自性(差別化要素)がある製品、商品と考えられること

 ②価格の弾力性が小さいこと(価格を高くしても需要はあまり減らないということ)

(3)スキミング・プライシング で期待できる効果

またスキミングの効果として、次のようなことが期待できます。

 ①上位の高品質ブランドイメージを構築できる可能性がある

 ②いい顧客層が獲得でき、高い粗利が獲得できる可能性がある

 ③価格競争に陥る可能性が低い

(4)スキミング・プライシング のリスク

スキミング・プライシングはうまくいけば非常に良質な市場を得られることになりますが、他方、次のようなリスクがあります。

 ①競合を生み出す可能性が高い

 

マーケティングの解説や事例は、だれでもが理解しやすいように、大企業や有名企業をイメージして書かれています。

それが「マーケティングは大企業でないとできない、関係ない」という大きな誤解を生みだす下地ともなっています。

この「ペネトレーション・プライシング」、「スキミング・プライシング」についてもそうです。

一見、大企業の経営者あるいは大手企業のサラリーマン対象かと思われるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

必ず、私たちにとっても有益な情報やハウツウがあります。そのようにマーケティング理論は理解すべきです。

時代の進展とともに社会は複雑化しており、中小企業経営もこれからはマーケティング戦略をもって挑むことが大切です。

ぜひ、自分なりにマーケティング戦略を経営に生かしていこうとする意欲が大切だと思います。

常に革新し、永続的に続く企業経営目指したいものです。

 

 

戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。

その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。