273.黒字と赤字、どこが違う⑥

2016年8月19日

第6回 黒字企業と赤字企業の「経営分析結果の違い」(3)

今回は資金繰り・安全性の違いを見てみましょう。

経営分析結果については前回のコラムを参照ください。

 

3.資金繰り・安全性の違い

 まず、事業の安全性はなんといっても手元資金の豊富さがあげられます。
日本の代表的な優良企業である任天堂は、無借金で、かつ年商を上回るキャッシュを保有していることは有名な話です。
そこで『No.28 手元流動性比率』を見てみましょう。
赤字企業も借金体質とはいえ、事業を継続していくために、平均月商の153%の手元資金を保有していることがわかります。
つまり、当面凌げるだけの現預金は保有しているということです。
優良企業はその倍に当たる274%の手元資金を保有しています。
大企業と比べて耐性力が弱い中小企業としては、もっと手元流動性比率をあげたいところです。

 運転資金面を見ますと、まず『No.33 運転資金要調達高』です。
運転資金要調達高とは、企業が売買活動をするために集めなくてはならない資金という意味です。
赤字企業は1400万円と低く、優良企業は4200万円と高いことがわかります。
しかし『No.34 運転資金要調達率』を見ると、ほぼ変わらなくなります。
つまり、規模の違いで優良企業の売買活動のための資金調達は大きくなります。
しかし、売上高を基準に見てみると、むしろ少しではありますが、少なくなります。
それを手元資金と比べて見たのが『No.35 手元流動性運転資金調達高比率』です。
赤字企業はギリギリの100%、優良企業は余裕の200%となります。

 次に設備投資である固定資産の資金の源泉を見ます。
『No.23 固定比率』とは自己資本の何倍程度の設備投資をしているのかということです。
赤字企業はなんと自己資本6.5倍の設備投資をしています。
つまり、5.5倍分は借金でしているということです。
一方、優良企業は60%、つまり自己資本の6割程度しか、設備投資をしていません。
したがって、設備投資に関しては、全額無借金で行っていることになります。
さらに詳しく、長期借入金も加えて見ればどうかというのが『No.24 固定長期適合率』です。
そうすると赤字企業も85%程度に下がり、さすがに短期的融資も財源とした設備投資はしてないということになります。
優良企業はほとんど借り入れがありませんので、47%とやや下がる程度となっています。

 最後に無借金経営状況を見てみましょう。無借金であれば究極の安全性と云えます。
No.29 無借金経営比率』を見ると、赤字企業は当然のことながら25%と低い無借金経営状況となります。
優良企業は230%と借入金の2.3倍相当の手元資金があるという状況で、超安全性の高い経営状況であることがわかります。

 

<資金繰り・安全性まとめ>
(1)赤字企業は手元資金が少ない。
(2)赤字企業は運転資金に見合うギリギリの手元資金しかない。
(3)赤字企業は手元資金以上の設備投資をし過ぎである。
(4)赤字企業は借入金に見合う手元資金を持っていない

 

 

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