97.財表基本知識 主資本科目

2012年10月2日

9.主なB/S総資本科目の見方

総資本(負債と純資産)科目における重要な科目(あるいは項目)は次の3点です。

(1)流動負債
①流動負債とは1年以内に返済しなければならない他人資本、つまり債務であり、借金でした。だから、なるべく1年以内には資金(現預金)化できる資産で使いたい、つまり運用したいところです。
②そこでその尺度として「流動資産」と比べて流動負債の運用を見てみます。そのことを『流動比率』と呼びます。
③理屈は①で説明したとおりです。しかし、流動資産がすべて1年以内に資金化できるとは限りません。在庫(棚卸資産)の中で売れ残る商品や製品もあれば、予定通り回収できない売掛金や焦げ付く売掛金などがあるかもしれません。したがって、流動負債の2倍程度の流動資産を持ちたいということになります。
④もし、流動負債の方が流動資産より多ければ経営課題と捉え、流動負債を減らす工夫、経営をしなければなりません。
※流動資産では1年以内に資金化できるかどうか不透明なので、当座資産(現預金と売上債権)と比流動負債比べることも大変有効です。そのことを『当座比率』と呼びます。

(2)短長期借入金
①事業を行うには基本的に銀行借入が必要です。しかし過大な銀行借入は金利と借入返済が経営を圧迫させます。また倒産の直接的な原因は借入返済ができなくなったときという事実も忘れるわけにはいきません。
②そこで借入状況を見る尺度として「平均月商」を基準に何ヵ月分の月商に当る銀行借入金があるのかを量ります。そのことを『借入金対月商倍率』と呼びます。
③理屈は借入金返済のおおもととなる源泉は売上です。売上なしに借入金を返済することはできませんが、適正な借入金返済額は平均月商の2.5%程度といわれています。また事業の継続性が読めるのは10年といわれており、したがって長期借入金であっても最長10年間で返済できるように経営をしなければなりません。そこで月商2.5%×120ヶ月(10年)=月商300%となり、銀行借入は月商3ヶ月分程度に抑えたいということになります。
④もし、月商12ヵ月分以上の借入金があれば、明らかに借入過大ですので、中期的に借入金を減らす工夫、経営をしなければなりません。
※現在はデフレ時代と云われています。最近再登板となった安倍総裁も含め、政治はデフレからの脱却を目指していますが、しかしデフレはまだ数年は続くと我々は思っております。そのような中で借入金をするということは最悪の選択とまでは言いませんが、重い選択であることをもっと強く認識すべきだと思います。極端に言えば「事業を行うには借入が必要」という常識を覆す必要があると思います。

(3)純資産
①純資産とは資本金と事業で積み重ねた利益の合計のことですが、これを自己資本ともいいます。もともと事業は利益ゼロからスタートし、成功つまり儲かることを目的に始めたわけです。ココの所を強く想い出しましょう。事業は儲かれば、その分、純資産の中の利益(繰越利益剰余金)として増え、何かに投資し資産も増えることになります。したがって、事業は自己資本だけで行えるのが理想であることを認識しましょう。
②そこでその状況を見る尺度として全体の「総資本」と比べて自己資本を量ります。そのことを『自己資本比率』と呼びます。
③理屈はなるべく自己資本で事業を行いましょうということです。特に中小企業はピンチになると誰も助けてくれません。したがって少なくとも事業で供している資金の半分以上は自己資本でありたいものです。
④もし、自己資本比率が20%もないのであれば経営課題と捉え、自己資本を高める工夫、経営をしなければなりません。
※現在、中小企業の平均自己資本比率は10%前後ですが、それと比べて自社は20%だから良いとか安心とは言えません。なぜなら、平均が悪すぎるのです。例えば、住まいを購入するのに住宅ローンが8割あればどう思うのでしょうか?良いと思われますか・・。事業もそれと同じです。せめて半分ぐらいは自己資本で事業すべきです。よく、「中小企業だから仕方がない」と言われますが、それは逆です。誰も助けてくれない中小企業だからこそ、自己資本は高めなくてはならないのです!

最後今回のことをまとめると次のようになります。
(1)流動負債は流動資産の半分以下をめざそう。
(2)銀行借入金は月商の3ヶ月分以下をめざそう。
(3)自己資本(資本金と繰越利益)は総資本の50%以上をめざそう。

ご質問等はインプルーブ研究所まで。お気軽に。