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383.財務諸表11 資金の見方

2018年10月8日 印刷用ページ

前回の「P/Lの見方」について復習しましょう。

 1.損益計算書の見方には ①売上高との比率で見る方法 ②B/Sと比べて見る方法 ③損益分岐点を見る方法の3つがある。

 2.売上高との比率で見れば、自社の収益構造がわかる。

 3.B/Sと比べて見れば、資産・資本の運用状況が判断できる。

 4.損益分岐点を見れば、自社の営業活動の採算点などがわかる。

 5.大切なことは、「分析値名」や「計算式」を覚えることではなく、「理屈を知る」ことです。
  理屈がわかると、
自社独自の意味ある見方ができようになる。

ここが財務諸表を読む「真髄」です。理屈さえ解ってくれば、目からウロコが落ちるように、財務諸表から自社の経営状況について様々なことがわかり始めます。そのためにも正しい経理をしなくてはなりません。
経理とは「経営を管理する」ことが理解できるかと思います。
だからこそ会計で強い会社が作れ「会計は会社を強くする」のです。

 

第11回目の今回でこのシリーズは最後となります。最後は事業の生命線である「資金の見方」です。
資金が途切れれば、事業は継続できません。そんな大事な「資金の見方・読み方」について、一緒に勉強しましょう。

 

11 資金(Fund:ファンド)の見方

(1)資金とは

「資金を見る、読む」というと難しく思われる方も多いようですが、そんなことはありません。カンタンです。
まず、自社の有り高は「現金と預金の合計」です。キャッシュフロー(CF)計算書で見ようと、資金繰り実績表で見ようと、同じです。現金が50万円で預金が300万円なら、350万円です。それ以上でもそれ以下でもありません。これが資金の有り高です。

問題は、この「資金の有り高」が自社にとって十分なのか、それとも不十分なのか、あるいは全く足りないのか、判断できることです。CF計算書では「現在資金有り高」の経緯(プロセス)がわかるだけで、これから対策は見えて来ません。
資金繰り実績表も同じです。ただ現在資金有り高に至るプロセスが違うだけで、やはり対策は見えて来ません。

大事なことは、いまの資金有り高で足りるのか、足りないのかであり、それはCF計算書でも資金繰り実績表でも判断できません。

また、現預金のことを「キャッシュ」「手元資金」「手元流動性」などといいますが、細かいことを除けば、意味は同じです。

 

(2)手元資金を読む

①平均月商と比べる  ☞手元資金÷平均月商=手元流動性比率(ヵ月分)
 家計で考えてみましょう。Aさんの家では、現金が10万円、預金口座に140万円あります。
 つまり、手元資金は150万円です。
 Aさんの家では奥さんも働いており、二人で毎月60万円の給与収入があります。これが「平均月商」にあたります。
 すると、手元流動性比率は150万÷60万で2.5ヵ月分あり、突然、給料がゼロになることはないでしょうから、
 少々のことがあっても「大丈夫」と判断できます。
 企業経営も同じです。
 ただし、企業経営はもう少しダイナミックな変化が起こりえますので、通常は「月商3~4ヵ月分程度の手元資金は必要」と
 されています。 さて、あなたの会社はどうですか?

②平均月費用と比べる  ☞手元資金÷(月原価+月販管費+月営業外費用)=費用基準手元流動性比率(ヵ月分)
 今度は「給与収入」ではなく、「月間生活費」で比べて見ようということです。
 先ほどの例で、もし生活費は50万円で、10万円は貯蓄しているならば、150万÷50万で3.0ヵ月分となり、
 手元流動性比率は少し上がります。
 しかしもし、生活はボーナスを取り崩して70万円でしているということであれば、150万÷70万ですから、2.1ヵ月分と
 なり、下がってしまいます。
 前者の例は、黒字経営をしている企業の場合に当たります。
 後者の例は、赤字経営を続けている企業の場合に当たります。

③営業負債と比べる   ☞手元資金÷流動負債 ×100=手元資金比率(%)
             当座資産÷流動負債 ×100=当座比率(%)
             流動資産÷流動負債 ×100=流動比率(%)

 事業にとって、日々の経営のために調達している資金は「何」だと思いますか?
 もうお分かりの方も多いかと思いますが、それは「流動負債」です。
 買入債務や短期借入金、未払金、未払費用などが毎日の経営活動の中で調達している「流動負債」です。
 これは借りたり支払ったり、さらにまた借りたりと常に流動していますが、常に返済しなければならない「他人資本」です。
 「経営の安全性」を考える上では、常にこれぐらいの流動負債はいつでも支払できる状況にしておきたいものです。
 そこで、この手元資金比率です。手元資金がこれら流動負債を上回るだけあれば、「安全」と考えられます。
 同じような考え方で、「当座比率」や「流動比率」もあります。
 当座比率は、返済原資を手元資金だけではなく、債権としてある「売上債権」も加えて考える見方です。
 流動比率は、さらに拡げて、返済原資を「在庫」や「その他流動資産」も加えて考える、随分ざっくりとした見方です。
 「経営の安全性」から考えれば、手元資金比率であれば100%前後、当座比率であれば売上債権の中に不良債権も含まれている
 かもわからないので120%前後、流動比率であれば売れ残る可能性のある在庫や回収できるかできないかわからないその他流動
 資産も含まれているので200%前後あれば、「安全性は高い」と言われています。

 

(3)有利子負債の残高を読む、判断する

いま多くの中小企業・小規模企業では、多くの企業が借入金まみれになっているといわれています。
赤字経営が続くので資金が不足し、中小・小規模企業は間接金融から資金調達をする方法しかないので、なんとか銀行融資で経営を
続けているのが珍しくない状況です。そこでいま冷静に有利子負債の状況を読み、適切な経営判断をすることが求められています。

①売上高と比べる      ☞有利子負債÷平均月商=借入金対月商倍率(ヵ月分)
 有利子負債とは「支払利息を支払わなければならない負債」のことですので、「短期借入金と長期借入金の合計」となります。
 これが平均月商3ヵ月分を超えると「黄色ランプ」が点滅している状況、6ヵ月分を超えると「赤ランプ」が点灯している状況と
 言われています。 その理屈は何なのでしょうか?
 借り入れすると当然、金利を支払って、そして返済しなくてはなりません。支払利息はP/L上に表記されていますが、返済金は
 どこに表記されているのでしょうか。それは「B/S」なのです。
 借入金を返済していけば、短期借入なり長期借入がその返済額分減っていきます。
 つまり、P/Lで利益を出して、税金を支払い、残った当期純利益がB/Sの繰越利益剰余金に繰入れされ、その中から返済する
 ということです。
 そして、次のようモデルが考えられています。
 利益を売上の10%を出して、税金を納付し、その残りから売上の5%に当たる金額を借入返済に充てる。
 そうすると、平均借入金返済期間を「5年」として考えると 5%×60ヵ月分=300%=売上3カ月分 となります。
 だから、借入金対月商倍率は平均月商3ヵ月分を超えないように注意する必要があるということです。
 この理屈は、ぜひ理解しておきましょう。 

②借入金返済期間を予測する  ☞有利子負債÷(年間営業利益+年間減価償却費)=債務償還年数(年)
                有利子負債÷(当期純利益+年間減価償却費) =実債務償還年数(年)
 
返済原資である利益に「年間減価償却費」を加える理由は、原価所客費は損益計算書上では減算されますが、
 おカネとしては外へ支払っているわけではありません。いわゆる、減価償却費は他の経費とは違い、社外流出していません。
 だから、支払原資に加えるわけです。そのことを「償却前営業利益」とか「償却前当期純利益」などといいます。
 また先ほどの当期純利益に年間減価償却費を加えた返済原資で計算した返済期間である債務償還年数が、一番正確な債務償還年数
 です。だから「実債務償還年数」といいます。
 しかし、金融機関ではそこまでシビアな見方はしません。最大限の返済原資をもとに債務償還年数を計算します。
 したがって、当期純利益ではなく営業利益をもとに計算するわけです。
 この債務償還年数が5年を超えると「黄色ランプ」の点滅、10年を超えると「赤ランプ」が点灯と言われています。

 

(4)販売に必要な運転資金を読む

販売に必要な「運転資金」とは、販売のために運用している「売上債権」と「棚卸資産」です(ここをよく理解してください)。
売上債権と棚卸資産は販売するためにおカネを運用している状況なのです。やがて債権となり、キャッシュとして回収されます。
一方、販売で調達している資金とは「買入債務」です。現金取引であれば支払わなくてはない仕入代金を掛で仕入しているわけ
です。それによって販売に必要な運転資金を読むことができます。

①運転資金要調達高     ☞(売上債権+棚卸資産)-買入債務=運転資金要調達高(円)
 これがマイナスということは、買入債務という資金調達だけで、売上債権と棚卸資産の運用資金を調達していることになります。
 プラスだと、その分が不足していることになり、手元資金から用立てしていることになります。

②運転資金要調達率     ☞運転資金要調達高÷年商 ×100=運転資金要調達率(%) 
 運転資金要調達率は年間売上高に対する運転資金要調達高の割合ですから、この要調達率で売上を伸ばす場合にどの程度運転資金 を用意しておかねばならないのか、予測することができます。
 例えば、要調達率が「20%」であったなら、売上を「2千万円」伸ばしたいときには、2千万円×20%で「400万円の運転 資金を準備する必要がある」ということがわかります。

 

 

今回は次のことを覚えておきましょう。

1.手元資金の過不足を読みたいときは、平均月商、平均月費用、流動負債などと比べます。

2.銀行借入金の借り入れ状況をを読みたいときは、売上高、償却前営業利益、償却前当期純利益などと比べます。

3.販売に必要な運転資金を読みたいときは、売上債権と棚卸資産の合計から買入債務を引いて、それを売上高で割ることで、
 運転資金要調達率が求められますので、それである程度読むことができます。

経理とは経営を管理することであり、正しい経理処理をすることによって、会計資料に会社の経営状況がハッキリと表れて来ます。
ですから、早期に対策を講じることが可能となり、会計で強い会社が作れ、「会計は会社を強くする」といわれるわけです。
ぜひ、申告書のための経理事務ではなく、会社のための経理をしましょう。

 

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