762.改善方法を掘り下げる 収益構造
2026年7月11日
法人の「赤字企業割合」は、約64%だそうです。
国税庁の統計を基にしたこの最新の調査によると、全国の約300万社のうち、およそ3分の2が赤字決算ということになります。
赤字割合は業種によって違いますが、主な業種の赤字割合は次のとおりです。
小売業:約70% 製造業:約67% サービス業:約66% 不動産業:約56%
これほど(特に中小企業において)赤字割合が高い理由として、一部に企業では節税のためにわざと赤字にしているとも言われて
いますが、これは所有と経営の分離が出来ていないことに起因しています。
しかし戦後の赤字割合が15%程度であったことを思い返すと、そもそも事業は黒字経営が当たり前でした。
それはだれしも事業を起こして損しようとは思わないことからも容易に想像できます。
したがって、一部わざと赤字にしていることを考慮しても、64%の赤字割合は異常です。
そこから脱却するには収益構造を改革しなくてはなりません。
黒字経営は当たり前、赤字から黒字化するためには収益構造の改革が必須!
1.収益構造を知る経営分析
自社のクリアな収益構造を知るためには「損益分岐点分析」をすることでした。
主な損益分岐点分析は次のとおりでした。
①変動費(円) : 商品仕入 + 原材料 (=直接原価)
変動費とは製造業であれば材料仕入、卸・小売業であれば商品仕入です。
サービス業であれば業種によっていろいろなものが変動費として挙げることが出来ます。
変動費とはいわゆる直接原価のことですから、各企業はこれに付加価値を付けて販売することになります。
決算書の損益計算書は全部原価計算で計算されていますので、間接原価が含まれていることになり、
付加価値がハッキリしません。
事業は付加価値(限界利益)が変動費以外の費用(固定費)を上回れば黒字となる!
②限界利益(円) : 売上高 ー 変動費
限界利益とはいま言ったとおり、各企業で産み出した「付加価値総計」のことです。
③限界利益率(%) : 限界利益 ÷ 売上高 ×100
限界利益率が嵩れば高いほど、固定費を回収するパワーが大きいので黒字経営なる可能性を高くします。
しかし一般的に、限界利益率が高ければ高いほど、販売数量は少なくなるという傾向があります。
いわゆる「高級品」というカテゴリになることが多いからです。
④固定費(円) : 売上原価 + 販管費 ー 変動費
固定費は変動費以外の費用です。
売上高の増減に関係なく、固定的発生する費用であり、売上原価と販管費から変動費を引いたものです。
この固定費が限界利益ですべて賄うことができれば、収支トントンで利益はゼロであり、
そのときの売上高を「損益分岐点売上高」といいまず。
⑤損益分岐点売上高(円) : 固定費 ÷ 限界利益率
損益分岐点売上高とは、固定費と限界利益が一致する売上高ですので、固定費を限界利益率で割り戻せば計算できます。
この損益分岐点売上高が低ければ低いほど、たやすく到達することができますので、いわゆる「高収益体質」と言えます。
⑥損益分岐点比率(%) : 損益分岐点売上高 ÷ 実売上高 ×100
損益分岐点売上高を実際の売上高と比べると、売上高に対する比率が求められます。
その比率を「損益分岐点比率」と呼び、数値で自社の収益体質を示せるようになります。
損益分岐点比率は自社の収益体質を数値で示すインジケーターです!
⑦経営安全率(%) : 100% ー 自社の損益分岐点比率
自社の売上高の百分率から損益分岐点比率を引くと、損益分岐点に陥るまでの比率となりますので「経営安全率」と呼びます。
つまり、利益ゼロとなる売上高までの余裕率を表すことになります。
仮に経営安全率が30%であれば、売上高が30%落ちても、利益はゼロとなるということです。
2.収益構造の改善方法を掘り下げる
では、どうすれば収益構造を改善することが出来るのでしょうか?
上記の計算式を見てまず気づくことは、どの式も「売上高を増やすことを求めていない」ということです。
収益構造を改善するのに売上高を増やすことは求めていない!
ポイントは2点となります。
(1)限界利益率を高める
限界利益率は固定費を回収するパワーを示す!
したがって、お客様と折り合いが付く範疇で限界利益率は高ければ高いほど良いということになります。
①同じ売上高でも変動費が少なくなれば、限界利益率は高くなる。
つまり、材料費入れや商品仕入が少なくなければ、その分、限界利益率は高くなります。
具体的にはデッドストックを少なくすることです。
そのためには在庫管理が重要であることに気づけます。
②同じ変動費でも売上単価が上がれば、限界利益率は高くなる。
売上単価を上げるためには、アイデアと少しの勇気が必要!
次に材料仕入や商品仕入が少なくならなくても、売価を上げることができれば、限界利益率は高くなります。
つまり、オンリーワン製品や商品である魅力度いっぱいの製品や商品にすれば、価格競争に陥らず、売価を維持・上げることが
できます。
そのためには、アイデア(創意工夫)と少しの勇気(売価を上げる勇気)が必要になります。
文章にすると抽象的ですが、それぞれの現場で考えると意外と具体策があるものです。
(2)固定費を抑える
①人件費以外の固定費抑制は社内に反対者はいない。
人件費以外の固定費を抑制することに、社内に波紋は生じない!
固定費は「人件費」と「人件費以外の固定費」に分けられます。
人件費を削減することはいろいろな負の波紋を社内に与えますが、
人件費以外の固定費を抑制することにはそんな波紋は生じさせません。
ただ、人件費以外の固定費を抑制するには「率先垂範」を示すことが大事です。
従業員が人件費以外の固定費を抑えるために努力しているのに、社長は蚊帳の外で、変わらす交際費などを使っていれば
反感を社内に生じさせることになります。
人件費以外の固定費が少しでも抑えられれば、それに応じて損益分岐点売上高は下がります。
②人件費のアップは単なるコスト増だけをもたらすのではなく、「やる気」という社内エネルギーをアップさせる。
人件費にはやる気やプライドに作用する力がある!
人件費に関しての課題は、どれだけ給与を上げることができ、社員のやる気を引き出すことができるかです。
一般的に中小企業の給与は大手に比べて低いと言われていますが、中小企業の従業員にも豊かな生活ができるように
努力すべき時代が現代です。
「小さかろう、安かろう」という、そんな甘えが許された時代は終わろうとしています。
しかし、人件費だけはその他の固定費にはない、やる気やプライドに作用する力があります。
したがって、一時的にはコスト高になりますが、まさしく経営手腕によって社内に付加価値をもたらせてくれます。
人件費のアップによって、売上高が増えたり、付加価値が増えたりという化学反応が起こります。
このように会計は上辺だけでなく、読み下していくことが大切です。
そこから戦略・戦術の方向性を見出すことができ、このことを「経営分析」といいます。
決して経営分析は上辺だけを見るだけのものではありません。