755.改善方法を掘り下げる 生産性③
2026年5月22日
生産性を上げるには「全員参加型経営」に変える必要があり、そのヒントがマズローやハーズバーグの理論にあると紹介しました。
では、「全員参加型経営」とはどのようなことをいうのでしょうか?
このことを有名にしたのは稲盛和夫氏です。
稲森和夫は2010年1月、経営破綻したJALの再建を任され、意識改革と徹底した構造改革によって僅か2年8ヶ月で再上場を
果たしたことは知られているところです。
1 全員参加型経営とは
全員参加型経営とは、一部の人間だけが意思決定を行うのではなく、全社員が経営者意識を持って経営に参画する
経営スタイルのことをいいます。
しかし、それは社員に迎合することではなく、また社員が仲良く働くということでもありません。
社員一人一人が会社の目標や業績を自分事として捉え、自律的に意思決定や改善を行う組織のことをいいます。
まさしく社員一人一人が経営者意識を持って、自分のこととして自分の仕事に当たることです。
2 全員参加型経営の主な特徴
全員参加型経営の特徴として、次のようなことが挙げられます。
(1)情報のオープン化
会社の業績、財務状況、経営ビジョンなどを全社員と共有し、経営の透明性を高めます。
(2)経営者意識の醸成
自分の仕事が会社の利益にどう直結しているのかを理解し、コスト意識や生産性向上に主体的に取り組みます。
(3)ボトムアップの意思決定
現場からの提案や改善策を重要視し、組織の下から上へ意見が通る風通しのよい仕組みを作ります。
3 全員参加型経営の事例
代表的な事例として挙げられるのが、稲盛和夫氏が京セラで実践した「アメーバ経営」です。
京セラでは、アメーバ組織を経営の単位、すなわち戦略事業単位(Strategic Business Unit)としています。
各アメーバは自主独立で経営されており、そこでは誰もが自分の意見を言い、経営を考え、それに参画することができます。
ひと握りの人だけで経営が行われるのではなく、全員が参加するというところに、その神髄があります。
この経営への参画意識を通じて、一人一人の自己実現(マズローの第5段階)が図られ、全員の力が一つの方向にそろったときに
集団としての目標達成につながっていきます。
全員参加の精神は日頃の開かれた人間関係や仲間意識、家族意識などを培う場として、仕事と同じように大切にしてきた会社行事や
コンパなどにも受け継がれているといわれています。
4 全員参加型経営で期待できるメリット
全員参加型経営として期待できる効果は次のようなものが挙げられます。
(1)モチベーションが向上する
自分の意見が反映されますので貢献が可視化されるため、仕事への意欲が高まります。
(2)変化への対応力が付く
全員が現場で判断できるので、「市場の変化」や「顧客ニーズ」に対して迅速に動けるようになります。
(3)人材育成につながる
全員が経営的な視点を学ぶことになりますので、次世代のリーダーが育ちやすい環境になります。
5 動機付けとは
この全員参加型経営の根底に流れているのは、さまざまな「動機付け」ですので、動機付けについて説明します。
(1)動機付けとは
動機付けとは、モチベーションのことであり、人が目標に向かって行動を起こし、目標を達成するまで維持・継続させる
心理的なプロセスや機能のことです。
心理学では、行動を始める「行動喚起」、行動を続ける「行動維持」、目標へ方向づける「行動調整」の3つの機能を持つと
されています。
(2)動機付けの種類
動機づけは、そのアプローチや発生源の違いによって、大きく2つの種類に分類されます。
1. 内発的動機づけ
自分の内面から湧き出る興味や関心、探究心によって行動が生まれる動機付けを「内発的動機付け」と呼びます。
内発的動機付けの特徴は、 損得勘定がなく、高い集中力や行動そのものの楽しさが持続しやすいということが挙げられます。
具体例としては、新しい知識を得るのが楽しいから専門書を読むとか、もっと上手になりたいから自発的に練習するなどです。
2.外発的動機づけ
外部からの報酬、評価、罰則、あるいは義務感などによって行動が促される動機付けを「外発的動機付け」と呼びます。
外発的動機付けの特徴は、即効性があり、他方、褒美やペナルティなどが無くなると行動が止まりやすいことが挙げられます。
具体例としては、給与やボーナスが上がるから働く、上司に叱られたくないから提出期限を守るなどです。
(3)知っておくと役立つ「2つの構成要素」
動機付けには、次の2つの掛け合わせで成立するといわれています。
1.動因(ドライブ)
お腹が空いた、認められたいなどといった、内側の生理的・心理的欲求。
2.誘因(インセンティブ)
美味しそうな料理、昇給・表彰などといった、外側にある目標や魅力的な対象。
全員参加型経営の根源は一人一人の「やる気」、やる気を引き出すのが「動機付け」!