748.会計のおさらい 会計の見方読み方④
2026年3月27日
3 安全性の見方・読み方
2月28日米国によるイラン攻撃開始で、原油価格が高騰し、かつそれにより円安に振れ出し物価もさらに上昇するなど、
経営を取り巻く環境には突然大きな暗雲が立ち込め始めています。
これから多くの3月決算企業では決算書が出来上がりますが、こんな時にこそ決算書や月次試算表で自社の経営安全性を確認し、
課題があるようなら早急に対策を講じることが重要となっています。
では、「安全性」とは何を意味し、またどのように見るべきなのでしょうか。
(1)安全性とは、事業を「倒産リスク」から遠ざけること
事業における安全性とは、事業を「倒産」というリスクから遠ざけることを指します。
具体的には、事業の財務的な健全性や借入金を始めとする負債を支払う能力がどれくらいあるかということになります。
その安全性分析は大きく分けて「短期的な安全性」「長期的な安全性」「資本構成の健全性」のという3つの視点から行います。
事業における安全性とは事業を「倒産」というリスクから遠ざけることをいう!
(2)短期的な安全性 =1年以内の支払能力=
「短期的な安全性」とは、手元資金やすぐ資金化できる資産が直近で支払う負債に対して十分あるか、確認することをいいます。
具体的な次のような見方があります
1.流動比率(%):流動資産÷流動負債×100
総合的な自社の支払能力を見る方法ですが、一般的に「200%以上が理想」といわれ、100%を下回ると「資金繰りが苦しい」
と判断されます。
但し、流動負債は間違いなく直近で支払う他人資本なのですが、流動資産にはすぐに資金化できるかどうかわからない資産も含まれ
ることが多く、流動比率は安全性を測るには少し曖昧な指標であるとも言えます。
流動比率は200%以上が理想!
2.当座比率(%):当座資産÷流動負債×100
そこでより明確な状況を示す指標が、この当座比率です。
当座比率には在庫などの資金化できるかどうかわからない資産を除外していますから、より確実な支払能力を判断することが
できます。一般的には「100%以上あれば安全」と判断されます。
当座比率が100%以上であれば経営は安全!
3.手元資金比率(%):現預金÷流動負債×100
しかし、当座資産には売上債権が含まれているので100%回収できるかどうか、まだ不透明な部分があります。
そこで一番固い支払能力を見る方法がこの手元資金比率となります。
手元資金比率は手元資金だけで流動負債に対する支払能力を見ますので、ほぼ間違いのない支払能力が判断できます。
一般的には「50%以上あれば安全」といわれていますが、石橋をたたいて経営をするには「手元資金比率100%超」を
目指したいものです。
一番安全な経営は手元資金比率が100%超であること!
4.預金対借入金比率(%):現預金÷長短期借入金×100
倒産リスクを一番高める他人資本は「借入金」です。
したがって借入をしている場合は、借入金に対する現預金の有り高を常に確認することは大切なことです。
目安は「30%以上」とされ、「50%以上であれば非常に安定している」と判断されます。
借入金に対して最低でも30%以上の現預金は常に備えておく!
(3)長期的な安全性 =長期的な資金の安定性=
2つめの視点「長期的な安全性」とは、設備投資など長期間使用する資産は安定した資金で賄われているかということです。
安定した資金とは自己資本のことですが、さらに金利が低い長期借入金も加えて判断します。
1.借入金対月商倍率(ヶ月):長短期借入金÷平均月商
借入金が多いとそれだけ支払利息も多くなるので、赤字経営に陥りやすい傾向になります。
またそのうえに、多額の元金を返済しなくてはなりませんから、倒産リスクを引き上げます。
そこで借入金のボリュームを確認する必要があります。
借入金対月商倍率とは、借入金が平均月商の何カ月分あるかを示す指標です。
一般的に「3カ月分~4カ月分が安全圏」、「6カ月以上は危険水域」といわれます。
<参考>なぜ、平均月商の3カ月分程度であれば「安全圏」なのか?
一般的に借入金の返済期間は「5年間」といわれており、月換算すると「60カ月」(=12カ月×5年)となります。
つまり、借入金は平均60カ月で返済する場合が多いということです。
その返済原資は手元資金を使わない前提で考えると、「営業利益」となります。
仮にその営業利益率を「10%」と想定し、その半分の「5%」を借入返済に充てると考えるとします。
そうすると「5%×60カ月=300%」となりますので、営業利益率300%とは月商3カ月分のことですから、「平均月商の3カ月分」と
なります。したがって、借入金対月商倍率のセーフティーゾーンは「平均月商3カ月分」となります。
なお、この指標は金融機関が融資申込企業の限度額を判断する際に重要視する指標でもあります。
借入金対月商倍率のセーフティゾーンは平均月商の3カ月分!
2.固定比率(%):固定資産÷自己資本×100
固定比率とは、設備投資など長期間使用する資産が安定した資金である自己資本で賄われているかということです。
自己資本とは純資産のことですが、自己資本は返済の必要もありませんし、金利もかかりません。
したがって、理屈では「設備投資である固定資産はすべて自己資本で賄われていることが望ましい」となりますので、
固定比率は「100%以下」、つまり固定資産がすべて自己資本で賄われている状態が望ましいとなります。
できれば、これからも設備投資をする可能性がありますので、50%~80%程度に抑えたいものです。
しかし残念ながら、一般的にはそのような企業は少なく、次の固定長期適合率も見ることになります。
固定比率は100%以下が望ましい!
3.固定長期適合率(%):固定資産÷(純資産+固定負債)× 100
固定長期適合率は固定比率を補完する指標です。
固定資産の取得原資を自己資本と安定した他人資本である固定負債を加えて考えます。
これが「100%」を超えていると、短期返済の借入金等も加えて長期間使用する設備を購入していることになりますので、
資金運用としては非常に危険な兆候です。
このことは住宅を購入するのに短期的なローンを加えて購入しないとことなどを考えると、よく理解できます。
固定長期適合率は100%以下に抑える!
(4)資本構成の健全性 =財務体質の強さ=
3つめの視点「資本構成の健全性」とは、総資本(事業資金)構成の健全性ということです。
具体的には他人資本と自己資本のバランス、会社全体の事業資金のうち返済不要な自己資本がどれくらいあるのかを見ます。
1.自己資本比率(%):純資産÷総資産×100
一般的に、一部の中小企業においては非常に自己資本比率が高いところもありますが、しかしほとんどは低い状況です。
一般的に「自己資本比率40%以上が安全圏」といわれ、「20%未満は倒産リスクが高い危険水域」とみなされることが
多くなります。
しかし、あらためて認識しておきたいことは、事業は「すべて初めは自己資本比率100%から始まっている」ということです。
そのように認識すると、自己資本比率が20%や30%であることの異常性を強く気づけるかと思われます。
自己資本比率の低いことに対する異常性を認識しましょう!
安全性は今年1年、最も求められることかもわかりません。
安全性が低い場合にはその算式から対策を考えましょう!
このように会計は上辺だけでなく、読み下していくことが大切です。
そこから戦略・戦術の方向性を見出すことができ、このことを「経営分析」といいます。
決して経営分析は上辺だけを見るだけのものではありません。