736.会計から見る強い経営の見分け方⑪

2025年12月12日

これまで10回に分けて「会計から見る強い経営の見分け方」についてお届けしてきたが、最後に『まとめ』をお届けする。

 

11 強い経営の見分け方⑪ 『まとめ』

(1)会計から見る強い経営の見分け方の資料は「貸借対照表」

 ①会計資料の損益計算書を見る経営者は多くいるが、貸借対照表を見る経営者はあまりいないと言われている。

  理由は、損益計算書は毎月の業績を示しているので自ずと興味があることと、また分かりやすいことも挙げられるのだろう。

  しかし、経営の現状を示し、強い経営にしていくヒントはすべて、「貸借対照表」にあるのだ。

 ②その貸借対照表は、損益の結果である自己資金の源となる「当期利益」を純資産に表示し、

  かつ他人資本と自己資本を合算した事業資金を、負債と純資産という形で表現している。

 ③加えて、その調達した資金がどのように運用されているのかを、手元資金・売上債権・棚卸資産などの流動資産と、

  設備投資である固定資産に分けて表し、資金の調達と運用のバランスを示している。

 ④このバランスが崩れてくると経営の危機を迎える橋上となり、逆にバランスが良いと強い経営になってくる。

 ⑤このバランスの見方が「会計から見る強い経営の見分け方」だ。

 ⑥損益計算書は自己資金の源である「利益」の算出プロセスを表しているので、むろん大切といえるが、

  極論すれば損益のポイントは黒字経営を続ければ良いだけの話である。

会計で強い経営かどうかを見分けるには『貸借対照表』を見ることが大切である!

 

(2)流動性資産・負債と固定性資産・負債はきちんと分ける

 ①会計にはその結果で正しい経営判断が出来るように守らなければならないルールがある。

 ②それが「ワンイヤールール」だ。これを遵守することで会計資料で正しい判断が出来るようになる。

 ③具体的には、1年以内に資金化できる資産は「流動資産」に計上し、1年以内に返済する債務は「流動負債」に計上する。

  それ以上のものは、それぞれ「固定資産」「固定負債」に計上する。

ワンイヤールールを遵守することで会計資料で正しい判断ができる!

 

(3)資金の運用にはルールがあること知る

 ①資金の調達は「負債・純資産」に示されており、資金の運用は「資産」に示されている。

 ②理想的な資金運用は、資金調達はすべて自己資本で行い、それを資産に運用することである。

  しかし、現実的にはそうもいかないので、そこで資金の使い方にはルールが存在する。

 ③それは、流動負債で調達している資金は100%流動資産で運用し、固定資産で運用している資金はなるべく自己資本とし、

  不足分だけは固定負債で補う運用だ。

資金運用の基本ルールは流動負債は流動資産で、固定資産は自己資本と固定負債を充てる運用!

 

(4)会計から見る強い経営の見分け方

1.手元資金を充分保有する経営に徹する

  これは「手元流動性比率」を見ればわかる。最低でも平均月商3カ月、目指すは6カ月分超だ!

 

2.資金調達と資金運用の健全性をチェックする

  これは流動比率ではなく、「当座比率」を見ればハッキリする。

  当座資産を流動負債以上に保有している経営に舵を切る!

  そのためには余計な流動資産や流動負債を抱えないことも大切だ。

 

3.売上債権は期日通りに回収する

  受取手形や売掛金は期日通りに回収することが重要だ。

  そのためには期日までに支払されてない取引先には期日直後に毎回連絡することが大切だ。

  それを繰り返すことで、取引先に自社に対する支払優先順位を上げることになり、また自社に対する信用信頼も増してくる。

  売上債権の残高には、各企業ごとに期日から適正金額がある。

  これは「売上債権回転期間」を見ればハッキリし、適正な売上債権回転期間とは約定とおりだ。

 

4.在庫は必要以上持たない

  在庫のあり過ぎは赤字経営への第一歩だ。

  月末には「売上原価による棚卸資産回転期間」を確認し、過剰在庫の是正を図る。

 

5.固定資産は必要最小限度とする

  固定資産はモノを生産するための設備である。決して財産ではない。

  したがって、必要最小限度の固定資産にすることが経営の要だ。

  固定資産は年に一回程度は「固定資産回転期間」を確認する。

 

6.売買活動をするのに不足している要調達運転資金額を知る

  売買活動のために不足している資金のことを「要調達運転資金」と呼んでいる。

  売買活動で調達している資金とは、支払手形と買掛金だ。

  一方、売買活動で運用している資金とは、売上債権と棚卸資産だ。

  したがって、支払手形と買掛金だけで、売上債権と棚卸資産が運用できれば、売買活動の資金繰りはラクということになる。

  不足している場合は手元資金を充てたり、運転資金を金融機関から借入することになる。

  手元資金と要調達運転資金を比較すれば「手元資金要調達運転資金比率」を掴めることになり、

  さらに要調達運転資金と年商を比較すれば「運転資金要調達率」が把握でき、

  増収の場合の必要な要調達運転資金が掴める。

 

7.負債の状況を知る

 負債は事業にとって重要な資金調達の一つだが、その実態を知っておくことは経営上、重要なことだ。

 一つは買入債務の返済期間をおおよそ掴んでおくことが大事で、「買入債務回転期間」で把握ができる。

 また自己資本と負債の割合を掴むことで、負債に対する依存度がわかり、そのことは「負債比率」でわかる。

 

8.銀行借入の状況を把握する

 銀行融資も経営にとって重要な資金調達の一つだが、やはりその実情を知ってくことは経営上、非常に重要なことである。

 銀行融資の状況は「借入金対月商倍率」「債務償還年数」で把握できる。

 借入金対月商倍率は安定した経営を行うには3カ月分以内、多くとも5~6カ月分以内には抑えておきたい。

 一方、完済見込み期間である債務償還年数は5年程度には抑えておきたい。

 

9.自己資本を高める

 強い経営の最終的な指標は、やはり「自己資本比率」の高さだ。

 元々どの事業も無借金からスタートを切っている。

 事業を維持していくためには、借金ナシで行っていくことは難しいが、それでも半分以上は自己資本で事業を展開したいものだ。

 また自己資本の相当額は手元資金で持っておきたいものだ。

 そのことは「自己資本余剰資金率」で見ればハッキリとわかる。

 

10.損益は変動損益計算書で見る

 最後に損益だが、冒頭にも言ったように「損益のポイントは黒字経営を続ければ良い」だけの話だ。

 そのためには収益体質を知っておく必要があり、そのためには「変動損益計算書」で損益を見ることが大事だ。

 変動損益計算書で見れば「限界利益(限界利益率)」「損益分岐点売上高(損益分岐点比率)」「階層ごと

 の労働分配率」などが掴め、収益体質の改善に取り組める。

 

 

会計は意味を考えて見ると「経営状況」を明らかにする!