734.会計から見る強い経営の見分け方⑨
2025年11月28日
月次試算表で「純資産の部」に注目している人はどれだけいるだろうか。
一般的に「損益計算書」だけを見ている経営者が多いと言われている。
しかし、経営状況が安全なのか、先行きに警戒感が必要ないのかなど、それらを示しているのは「貸借対照表」なのだ。
貸借対照表の「純資産」と「現預金」を見ていれば、それらのことはおおよそ推測できる。
そこで今回の「会計から見る強い経営の見分け方」は、その一翼を担う『純資産』をテーマにする。
9 強い経営のポイント⑨ 『自己資本比率』と『自己資本余剰資金率』
(1)純資産とは総資産と負債の差額である
純資産とは、資本金などの「純資産の部」項目を積み上げたものではなく、純資産は総資産から負債を差し引いた差額なのだ。
その差額から「資本金」を差引いたものが、「繰越利益」と「当期利益」となる。
したがって純資産は、総資産と負債の差額なので、理論上は「返済義務のない資産」を指すことになる。
「総資産=負債+純資産」ではなく「総資産ー負債=純資産」なのだ!
だから常に結果的に「総資産=負債+純資産」となり、「バランスシート」と呼ばれる所以となる。
また純資産は「自己資本」とも呼ばれ、株主からの出資金(資本金や資本剰余金)や企業活動で得た利益(利益剰余金)が含まれ
事業の財政状況の健全性を示す重要な指標となる。
(2)純資産の概要
1.純資産の内訳
純資産は株主資本とそれ以外に大別され、以下のような内容となっている。
①株主資本
資本金 : 会社設立時に株主が出資した事業資金 *一般の中小企業において、株主とは「経営者」のみである
資本剰余金: 資本金以外で株主から受け取った出資金 *一般の中小企業においてはほとんどない
利益剰余金: 過去からの利益の蓄積 *事業を始めて以来の「当期純利益」の積み重ねである
自己株式 : 会社が自社の株式を買い戻したもの *控除項目となるが、一般の中小企業においてはほとんどない
②株主資本以外 *これらは一般の中小企業においてはほとんどない
評価・換算差額等: 資産の評価額の変動などによるもの
新株予約権 :あらかじめ決められた価格で将来、新たに発行される株式を取得できる権利
など
純資産とは中小企業においては「資本金」と「利益剰余金」だけと考えてよい!
2.純資産と総資産の違い
「純資産」と「総資産」、純と総の違いだけで、言葉はよく似ている。
しかし、下記のとおり、全く違うものである。
①総資産は、事業で持つ全ての資産合計額であり、現金や売掛金、建物などの具体的な物や権利の合計を指す。
②純資産は、総資産から借入金や返済義務のある負債を差し引いたものであり、「返済義務のない」純粋な資産合計を指す。
純資産は事業を開始して以来の「資本金」および「儲けた利益」である!
したがって、純資産が資本金より少ない「債務超過」になっていれば、事業が重大な局面に陥っていることを示している。
*「債務超過」とは、負債の総額が資産の総額を上回っている状態を指し、全ての資産を売却しても、借金等の負債を完済できない
極めて深刻な財政状況を意味している。
3.純資産が重要な理由
①純資産は財政状況の健全性を示しているからである
純資産の割合が高いほど、借入金などの負債に頼らない経営ができていることを示し、倒産などのリスクが低いと判断できる。
②事業の創業以来の収益性を示しているからである
『ROE』とも呼ばれる「自己資本利益率(当期純利益 ÷ 自己資本 × 100)」などを用いて、
純資産に対してどれだけの利益を上げているかを測ることで、事業のこれまでの収益力が判断できる。
以上が、一般的に説明される「純資産」の概要だが、多くの中小零細企業にとっての要点は次のとおりとなる。
①純資産は「資本金」と利益剰余金(「繰越利益剰余金」「当期純損益」)の3科目が重要
②純資産は返済義務のない純粋な資産を示している
③純資産は割合が高ければ高いほど倒産リスクが低いことを示す
(3)純資産の見分け方 『自己資本比率』と『自己資本余剰資金率』
では、純資産を強い経営であるために、どう見分ければよいのだろうか。
それは『自己資本比率』と、自己資本を余剰資金としてどの程度持っているのかを示す『自己資本余剰資金率』を見れば、
強い経営であるかどうかが分かる。
1.自己資本比率
『自己資本比率』とは、ご存知のとおり、調達している他人資本と自己資本の合計である「総資本」と、それに占める自己資本の
割合のことだ。
自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100
この『自己資本比率』が高ければ、借入などの他人資本である負債に頼っていない経営をしていることを示すので、
不況時などのピンチにも強い財政体質だと言える。
つまり、『自己資本比率』は、強い経営であるための基本要件だ。
高い自己資本比率は「強い経営」の基本要件!
しかし、いくら自己資本比率が高くても、余裕資金がなければ、いざという時には対処できない。
そこで、次の見極めが大切となる。
2.自己資本余剰資金率
自己資本のうち、少しでも多くの余剰資金を保有することが大事だ。
余剰資金とは「手元資金」のことを指し、具体的に現金と預金のことである。
したがって、『自己資本余剰資金率』は、次のように求める。
自己資本余剰資金率(%)=手元資金÷自己資本×100
自己資本である純資産が2000万円あって、手元資金である現預金が1000万円あれば、『自己資本余剰資金率』は50%となる。
「手元資金が多ければ資金を活かしていない」とよく書籍などの掲載されているが、それはあくまでも上場企業の話であり、
市場から資金を預り、それを運用して事業活動をしている場合の話である。
しかし、一般の中小企業は市場から資金を預かり、それを運用して事業活動などはしていない。
もともと財務力が弱い中小企業は、手元資金が多くあれば多くあるほど、安定した経営ができるので、従業員などを守るめためにも
むしろ手元資金が多くあるような経営を志向すべきなのだ。
一般的な経営の話は、すべて上場企業や大手企業を前提にして説明されているので、中小零細企業のことなどを前提としていない。
したがって、それを鵜呑みにして経営していると、とんでもないリスキーな経営となってしまう。
中小零細企業は手元資金を高める経営が肝心!
ただし、もし経営者である貴方が大きなビジネスを志向しているのであれば、資金を有効活用しないとそうはならないので、
それでも“バランス”をとりながら、積極的な資金運用を考える必要がある。
「強い経営」とは自己資本比率が高く、自己資本余剰資金率が高い経営をいう!