733.会計から見る強い経営の見分け方⑧

2025年11月23日

『借入金』とは経営にとって重要な資金調達方法の一つである。

しかし、返済をきちんとしないと銀行取引も停止となり、また金利も負担となるので、収益状況を悪化させてします。

したがって、借入金は重要な資金調達方法ではあるのだが、しっかり管理しなければならない資金調達方法でもある。

今回の「会計から見る強い経営の見分け方」はそんな『借入金』をテーマにする。

 

8 強い経営のポイント⑧ 『借入金対月商倍率』と『債務償還年数』

(1)借入金は会計処理上、短期借入金と長期借入金に分けられる

借入金とは、外部から借りた返済義務のある資金「他人資本」のことであり、「負債」に分類される。

借入金は、金融機関からの融資だけでなく経営者自身や取引先などから借りたお金も含まれるが、会計上、短期・長期借入金は

支払利息が伴う「有利子負債」のことを指すので、支払利息が伴わない借入金は、役員借入金や長期未払金として区別する。

金融機関等から借入金である融資は、返済期間が1年以内であれば「短期借入金」、1年を超える場合は「長期借入金」として

区別する。

この区別は会計処理上のルールではあるが、その意味は貸借対照表上で自社の財務分析をするうえで必要なので、そうするように

求められている。ただ単にそういうルールであるということではなく、貸借対照表を経営に活かすために必要なことなのである。

借入は経営に役立つ貸借対照表にするためにも返済期間によって『短期』と『長期』に分ける!

 

また実務上、短期借入金は返済期間が短いので金利は長期借入金よりも高く設定され、長期借入金は返済期間が長いので金利は

短期借入金よりも低く設定されているのが一般的だ。

さらに長期借入金は返済期間が長いので使途は設備投資などに限定され、短期借入金は返済期間が短いので使途は限定されてない

ことが多い。したがって、運転資金や賞与資金などであっても、金融機関との交渉で返済期間が長い長期借入金として借入れられる

のであれば、それに越したことはない(但し、現実的にはむずかしい)。

 

(2)借入金の見分け方 借入金対月商倍率と債務償還年数

では、借入金を強い経営にするために、どう見分ければよいのだろうか。

それは、借入金自体の金額と、借入金の完済見通しで見分けることになる。

借入金自体の金額の見分け方を『借入金対月商倍率』といい、借入金の完済見通しを『債務償還年数』という。

1.借入金対月商倍率

借入金自体が多いか、少ないかは、企業規模によって違う。

それは常識的に考えても、年商1000億円の企業と年商1000万円の企業では違うことは容易にわかる。

そこで現在の借入金残高を「平均月商」というスケール(物差し)で計り、そのことを『借入金対月商倍率』という。

借入金対月商倍率(ヶ月)=借入金残高(短期+長期)÷平均月商

 

この借入金対月商倍率のセーフティーゾーンは比較的厳しく「平均月商の3カ月分」といわれている。

これにはしっかりとした理屈がある。

①一般的に、借入金の返済期間は「平均5年間」であり、月換算すると「60カ月」となる。

②つまり借入金は平均60カ月で返済しなければならず、その返済原資は手元資金を使わない前提で考えると「経常利益」となる。

③仮に、その経常利益の売上高経常利益率を「10%」と想定し、その半分の5%を借入返済に充てると考える。

④答えは「5%×60カ月=300%」となり、売上高経常利益率300%分とは「平均月商の3カ月分」となる。

⑤よって、『借入金対月商倍率』のセーフティーゾーンは「平均月商の3カ月分」となる。

⑥現実的には売上高経常利益率10%を確保している企業は少なく、そう考えると、もっと許容借入金額は少なくなる。

借入金対月商倍率のセーフティーゾーンは3ヵ月!

 

したがって、借入総額はなるべく「平均月商の3カ月分以内に収めること」が、強い経営のポイントとなる。

 

2.債務償還年数

債務償還年数とは、債務を完済できる年数期間という意味だが、では、借入金返済の原資は何であろうか?

それは先ほどの「経常利益」であり、さらに細かく言えば、プラス「減価償却費」となる。

減価償却費は費用に計上しているが、これは資金支出を伴わない費用なので、減価償却費分は資金として残るからだ。

そして試算するにはいろいろな条件があるが、債務償還年数上は分かりやすく、最短期間を求める条件で試算をする。

つまり、経常利益と減価償却費を全額、借入金返済に充てるという考え方だ。

債務償還年数(年)=借入金残高(短期+長期)÷(年間経常利益+年間減価償却費)

 

そうすると、現状での最短の借入金完済期間が計算できることになる。

これは「5年間程度」がセーフティゾーンとなる。

実際は納税資金や内部留保の必要性もあるので、全額借入金返済に充てることは出来ないので、5年でも現実的には『10年程度」

になってしまう。

現代は10年先のことを見通すことは不可能なので、債務償還年数5年程度がMAXであることが理解できる。

したがって、赤字経営で借入することが如何に無謀なことが理解でき、赤字解消のための設備投資などは如何に大博打な考えなのか

理解できる。

 

 

 

借入金をするためには『黒字経営』であることが大前提である!