731.会計から見る強い経営の見分け方⑥
2025年11月7日
第6回の「会計から見る強い経営の見分け方」は『要調達(売買)運転資金』だ。
少し言葉は難しいが、その文字面をよく見てみると「売り買い活動に関する運転資金の要調達高」ということがわかる。
言い換えれば「売り買い活動に関する運転資金の不足額の算出」ということであり、不足額は手元資金で補わなくてはならない。
したがって、要調達運転資金が少なければ少ないほど手元資金から持ち出さなくて済むので、資金繰り的にはラクになる。
その考え方はこうだ。
①売買で運用している資金とは、「売上債権」と「棚卸資産」という流動資産である。
②売買で調達している資金とは、「買入債務」という金利がかからない他人資本である。
③したがって、売上債権や棚卸資産より買入債務の方が多ければ、売買活動に関する運転資金は調達している資金で回るので、
別途、調達する必要がないということになる。
しかしこれは売買活動に関してだけ切り出せばそういうことなるということであって、経営にはいろいろな側面があるので、
やはりバランスが大切だ。だから、買入債務が売上債権・棚卸資産より多ければ「良い」とは、一概に言い切れない。
「要調達運転資金」は売上債権・棚卸資産より買入債務が多いほど良いと言っているのではない!
6 強い経営のポイント⑥ 『要調達(売買)運転資金』と『要調達率』
(1)要調達運転資金とは
「要調達(売買)運転資金」とは、商売を円滑に回すために、調達する必要のある資金のことだ。
特に、商品を販売してから代金を受け取るまでの「入金と支払」のタイムラグを乗り越えるために、準備しておくべき資金のことを
指している。
1.要調達運転資金の主な特徴
①商売を続けるために不可欠な資金である
つまり、毎日の事業活動に必要な費用をまかなうための資金ということだ。
②入金と支払のタイムラグに対応するための資金である
企業の取引では、仕入代金の支払が先になる「掛売」が一般的だ。
つまり、販売代金の入金よりも仕入代金の支払が先になるので、その間の必要な資金を補う必要がある。
③季節変動や事業拡大時にも重要な指標となる資金である
季節性の高い事業などでは、繁忙期前の仕入れなど、特定の時期には多額の資金が必要になる。
また、事業拡大に伴う人員増加などでも給与支払総額が増え、運転資金が増加することになる。
要調達運転資金はそんなときに重要な指標となる資金である。
④計算方法
要調達運転資金 =(売上債権 + 棚卸資産)ー買入債務
・売上債権とは、売掛金や受取手形のことであり、売買で運用している資金である。
・棚卸資産とは、商品在庫のことであり、同じく売買で運用している資金である。
・買入債務とは、買掛金や支払手形のことであり、売買で調達している資金である。
2.運転資金が不足した場合
①不足を示す『要調達運転資金』を補填する手元資金が不足すると、仕入れができなくなる。
②また、人件費や家賃、光熱費なども払えなくなる。
③その結果、最悪の場合は商売を続けることができなくなる。
3.運転資金必要額の目安
①業種によって異なるが、一般的には月商の3カ月分以上、理想としては6カ月分程度の運転資金(手元資金)を確保することが
望ましい。
②そのためには「資金繰り実績予測表」を作成し、長期的な視点で収入と支出のバランスを把握することが重要だ。
③財務諸表の活用して貸借対照表から、自己資本比率や借入依存度、債務償還年数など分析して確認することも、
資金調達を判断する上で役立つ。
(2)要調達運転資金の見方
では、「要調達(売買)運転資金」を、どのように見分ければ良いのだろうか。
1.手元資金と比較する
①手元資金との比較では要調達運転資金が手元資金を上回っていないかを確認し、自転車操業の状態ではないかなどを判断する。
②計算方法
手元資金要調達運転資金比率=手元資金÷運転資金要調達高×100
③見方
比率が低い場合は、運転資金が不足し、慢性的に資金不足(自転車操業)に陥っている可能性を示唆している。
2.年商と比較する
①年商と比較することによって、売上が増える/増やすとどのくらいの運転資金を準備しなくてはならないのかが推測できる。
そのことを『運転資金要調達率』という。
②計算方法
運転資金要調達率=要調達運転資金÷(売上高÷経過日数×365)×100
③見方
比率が高いほど、売上増加に伴う「資金の増加が大きくなる」ことを意味する。
たとえば、要調達率が11.4%の場合、売上が1000万円増えると114万円の運転資金が必要になることを意味する。
結局は普段から手元資金を高める経営が強い経営となる!