729.年収の壁による年末調整改正事項

2025年10月24日

2025年は「年収の壁」見直し論議によって、年年末調整は各種控除や申告書に変更が加えられている。

特に「年収の壁」対策として、所得税の控除制度が見直され、その影響で課税対象額だけでなく各種控除の対象判定も変更された。

2025年の年末調整は、事務手続きなどでミスを起こさないように注意することが必要だ。

そこでそれらの変更点について、かんたんに、わかりやすく説明する。

 

■主な変更点は3点

 1 基礎控除・給与所得控除の引き上げ

 2 扶養控除・配偶者控除などの所得要件の緩和

 3 特定親族特別控除の新設

それぞれについて、以下に説明する。

 

1 基礎控除と給与所得控除の引き上げ

(1)基礎控除は、48万円から『最大95万円』まで、段階的に引き上げられる

国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」より

従来、基礎控除は一律『48万円』であった。

それが合計所得金額に応じて、『58万円〜95万円』の範囲で控除されることになる。

しかしこれは2025年と2026年だけの暫定措置なので、2027年以降は一律58万円控除に戻る。注意が必要だ!

なお、合計所得金額2,350万円超の基礎控除額は、従来どおり段階的に48万円〜16万円の間で減額措置が適用される。

基礎控除は『58万円から95万円』の範囲に変更 但し、今年と来年限り!

 

(2)給与所得控除は一律『65万円』に引き上げられる

国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」より

これまで年収額(給与等の収入金額)に応じて『最大55万円』をだったものが、一律『65万円』に引き上げられる。

給与所得控除は一律『65万円』に引上げ!

 

 

2 扶養控除・配偶者控除などの所得要件の緩和

(1)扶養親族や配偶者などの所得要件の見直し

国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」より

基礎控除・給与所得控除が引き上げられたことにより、扶養親族や配偶者などの所得要件が見直された。

これによって昨年までは対象外だった『年収103円~130万円未満』の家族(妻・子・親など)が控除対象になる。

扶養親族・配偶者の『所得要件』が変更!

 

(2)勤労学生控除の見直し

勤労学生控除についても、合計所得金額の要件が75万円以下から『85万円以下』へと引き上げられ、これによりアルバイト収入が

ある学生でも控除対象になりやすくなった。

勤労学生控除の所得要件が『85万円以下』に変更!

 

(3)2025年12月1日以後からの適用

これらの改正は、2025年12月1日以後に支払う給与から適用される。

そのため、新たに扶養控除等の対象となる扶養親族等がいることになった従業員は「令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)

申告書」にその旨を追記して提出する必要がある。

また、従業員のうち、公的年金等の受給者が令和7年分の所得税について新たに扶養控除の適用を受ける場合は、原則として確定

申告での対応が求められる。

なお、2025年11月までの給与および公的年金等の源泉徴収事務には変更はない。

ただし、所得要件の変更は12月からなので、11月分以前は関係がない!

 

 

3 特定親族特別控除の新設

国税庁「No.1180 扶養控除」より

(1)「特定親族特別控除」が創設

基礎控除の引き上げにともない、大学生の年代の子ども(19歳以上23歳未満)がいる世帯の税負担を軽減するために「特定親族

特別控除」が創設された。

これは従来「103万円の壁」を意識して就業調整をしていた学生アルバイトに対する措置であり、特定親族にあたる扶養親族の合計

所得金額に応じて段階的に特別控除が受けられるというものだ。

大学生年代の子どもに対して『特定親族特別控除』が創設される!

 

(2)特別扶養親族特別控除の要件は「合計所得金額58万円以下」

そもそも、「扶養控除」には扶養親族の年齢や同居の有無などによって「No.1180 扶養控除」のとおり、控除額が決まっている。

このうち、特定扶養親族として控除を受けることができる要件の中で「合計所得金額が48万円以下(収入が給与だけの場合は年収

103万円以下)」が「合計所得金額が58万円以下(収入が給与だけの場合は年収123万円以下)」に変わる。

特別扶養親族特別控除は合計所得金額が『58万円以下』に引上げされる!

 

(3)「合計所得金額が58万円以下」外でも段階的な控除が適用される

しかし上記の要件だけでは、より多くのアルバイト収入を得る大学生がいる場合にこの控除が適用されなく世帯への税負担が大きく

なるので、この年齢層に対しては所得の多寡に応じて段階的な控除が適用されることになっている。

つまり、合計所得金額が58万円以下(年収123万円以下)であれば、「特定扶養親族」として扶養控除が適用され、

合計所得金額58万円を超える場合(年収123万円超)は特定親族特別控除が適用されることになっている。

また、特定親族特別控除は所得が増えるほど控除額は少しずつ減額され、最終的には合計所得金額が123万円(年収188万円)を

超えると適用対象外となる。

合計所得金額が58万円超、123万円までは『特定親族特別控除』が適用される!

 

(4)「特定親族特別控除」の適用を受けるには「書給与所得者の特定親族特別控除申告」の提出が必要

この控除を適用を受けるには、新たに準備された「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出す必要がある。

ただし、一人しか認められない、配偶者特別控除との重複制限、相互適用の禁止など、制限事項があるので、注意が必要だ。

特定親族特別控除受けるには『給与所得者の特定親族特別控除申告書』が必要!

 

以上、今年の年末調整は注意して行おう!