728.会計から見る強い経営の見分け方④

2025年10月17日

第4回目の「会計から見る強い経営の見分け方」は『棚卸資産』だ。

『棚卸資産』はこのコラムでも何回か紹介しているように、優良企業と言われる企業は共通して少なくしている資産だ。

その意味では、棚卸資産は強い経営につながる「収益改善のKFS」と言える。

 

 

4 強い経営のポイント④ 『棚卸資産回転期間』

(1)棚卸資産とは

『棚卸資産』とは、売るための商品や製品・材料の在庫ことであり、これが無くなると売るものが無くなってしまう。

だからどうしても心情的には、売れるより多めの棚卸資産を抱え込みたくなる。

しかしその結果、自家消費や廃棄処分などを多くすることにつながり、コスト高経営になる原因となる。

棚卸資産を必要以上に抱えることで原価率が上昇し、売上総利益率を下げ、儲からない収益体質になるということだ。

『棚卸資産』は収益体質改善の一丁目一番地!

 

(2)棚卸資産回転期間とは

①棚卸資産回転期間は棚卸資産の適正な有り高を判断するバロメーター

 具体的には、企業が保有する棚卸資産である在庫が、仕入から販売までに、どのくらいの期間を要しているかを示し、

 この期間が短ければ短いほど、在庫の回転が速く、経営効率が良いと判断される。

棚卸資産回転期間は在庫切れを起こさぬ限り、短いほど良い!

②計算式

 棚卸資産買回転期間の計算式は次のとおりだ。

棚卸資産回転期間(月)=棚卸資産 ÷ 売上高× 12

 ※より厳密に計算するためには、「売上高」を「売上原価」に置き換えるとよい。

③棚卸資産回転期間でわかること

 1.在庫管理の効率

 期間が短いほど、在庫が効率的に現金化されていることを意味する。

 逆に期間が長い場合は、在庫が滞留している可能性があることを意味する。

 2.資金繰りの健全性

 在庫を現金化するまでの期間がわかるので、資金繰りを考える上で重要な指標となる。

 3.販売動向

 期間が急激に長くなっている場合は、商品の売れ行きが鈍化している可能性を示唆する。

 逆に急激に短くなっている場合は、その商品の売れ行きが良くなっている可能性を示唆する。

 いずれにせよ、その動向を注視して、仕入数量を調整しなくてはならない。

④棚卸資産回転期間の適正水準

 棚卸資産回転期間の適正な水準は、企業の業種によって異なる。

 たとえば、コンビニのような小売業であれば、商品の入れ替わりが速いので、回転期間は短くなる。

 自動車や重機などを扱う製造業であれば、製造から販売まで時間がかかるため、回転期間は長くなる傾向にある。

 自社の適正水準を図るためには、過去の自社の数値と比較するだけでなく、同業他社の平均値と比較することが重要だ。

⑤棚卸資産回転期間が長い場合の原因と対策

 棚卸資産回転期間が長い場合は、以下のような問題が考えらる。

 1.売れ行きが悪い商品が多い。

 2.過剰な仕入れを行っている。

 3.販売管理自体に問題がある。

 改善策は、デッドストックの削減、需要予測の精度向上、仕入数量の見直しなどが挙げられる。

棚卸資産回転期間を改善するには

デッドストックの削減、需要予測の向上、仕入数量の見直しなどが大事!

 

(3)棚卸資産回転期間の改善効果

棚卸資産回転期間を改善し短縮化すると、経営効率や財務状況など、多岐にわたる好影響がもたらされる。

①資金繰りが改善する

 棚卸資産回転期間が短縮されると、在庫が速やかに現金化されるので、次のような効果がある。

 1.資金の有効活用

 売れない在庫(商品)に資金を注ぎ込むことを防ぐことになるので、たとえば設備投資や新製品開発など、

 本来の企業成長のための活動に資金を投資できるようになり、仕入から現金回収までの期間が短くなるので

 資金繰りも改善される。

 2.コストの削減

 在庫を適切に管理することで、さまざまなコストが削減できる。

 たとえば、在庫が減るため、倉庫の賃借料や光熱費、管理費用などが削減できたり、

 あるいは在庫が減れば在庫にかける保険料なども少なくなる。

 一番大きいのは長期間売れない在庫が少なくなることで、商品が陳腐化したり、売れずに廃棄処分となるロスが減る。

 3. 経営効率の向上

 棚卸の時間や手間が減り、管理作業にかかる人的コストも削減でき、かつそのことは需要予測の精度向上も示しているので、

 市場の傾向や顧客ニーズをより正確に予測できるようになってくる。

 そうすると、在庫の動きがスムーズになり、生産や発注そして物流などのプロセス全体が効率化する。

 4. 顧客満足度の向上

 適正な在庫管理は「顧客サービス向上」にもつながっている。

 たとえば、人気のある商品の在庫が適切に保たれることで、在庫切れによる販売機会の損失が防げたり、

 食料品などの場合は、より新鮮な商品を顧客に提供できることになる。

 これらによって、顧客の信頼につながり、リピート購入やロイヤリティの向上にも貢献する。

 5. 収益性の向上

 そしてこれらの結果、最終的には事業の収益性を高める。

 たとえば、滞留在庫を処分するための大幅な値引き販売が減る、売上総利益率の維持・向上につながる、

 あるいは人的なコストや管理費の削減によって、利益が向上する。

 

棚卸資産回転期間の改善は資金繰り、コスト削減、経営の効率化、顧客満足度、収益性向上など

事業のあらゆる面を改善するので『優良企業のKFS』となっている!