726.会計から見る強い経営の見分け方②

2025年10月5日

前回は「会計から見る強い経営の見分け方」として、究極的には『資金繰り状況』であることを説明し、

その手元資金である固定性預金を除いた現預金と平均月商を比較する『手元流動性比率』でその状況が判断できると紹介した。

今回は「日常の営業活動における資金収支のバランスを見る方法」を紹介する。

 

 

2 強い経営の見分け方② 『当座比率』

日常の営業活動に関する資金繰りは「日常の営業活動に関する資金収入予定額」と「日常の営業活動による他人資本の支出予定額」

とのバランスで見ることができる。

日常の営業活動に関する資金収入予定額とは、手元現預金と売上債権、棚卸資産、その他流動資産であるが、売上債権は売価である

ので、通常は日常の営業活動による他人資本の支出予定額よりも多くなる。

しかし、棚卸資産やその他流動資産など、かなり未定額も多く含まれている。

この収支バランスさえ良ければ、日常の営業活動に関する資金繰りは回っていく可能性が高いと判断できる。

そこでそのバランスの見方として、一般的には『流動比率』が紹介されることが多く、

これから紹介する『当座比率』はその補助的な役割として紹介されることが多い。

しかし、現実的には『流動比率』では未確定要素も多く、読み間違えることも起こりえるが、

『当座比率』であればそのようなことが起こる可能性は低くなる。

よって、『当座比率』で判断する方が、営業取引に関する資金収支は読み間違えることはない。

したがって、当座比率は「酸性比率」とも呼ばれる。

流動比率は読み間違えることも起こりえるが、当座比率であればその可能性は低い!

 

(1)当座比率とは

『当座比率』とは、事業で持つ現金・預金、売掛金、受取手形、有価証券などの換金性の高い「当座資産」が、

1年以内に支払期限がくる「流動負債」のどれくらいあるかを示す指標だ。

事業の「短期的な支払能力」をより厳密に分析することができる。

当座比率の計算式 =当座資産÷流動負債×100

一般的に100%以上が健全な水準とされ、100%未満は流動負債の支払に当座資産が不足していることを示すので、

注意が必要と判断される。

当座比率は事業の短期的な支払能力を厳密に分析できる!

 

(2)当座比率でわかること

①「短期的な支払能力」の評価ができる

 換金性の高い資産のみを見るため、在庫などの現金化しにくい資産に頼らずに短期的な債務を返済できるかどうか、

 より厳密な判断が可能となる。

②「財務の安全性」を確認できる

 当座比率が高いほど、短期的な債務を返済するための十分な現金同等物が事業にあることを意味するので、

 財務体質の安全性が高いと評価される。
③当座資産を構成する資産

 当座資産を構成する資産は、現金・預金、売掛金、受取手形、有価証券などだ。

④流動負債の構成する負債

 1年以内に支払期限が到来する負債であり、つまり流動負債となる。

当座比率は「短期的な支払能力」と「財務の安全性」が確認できる!

 

(3)流動比率との違い

①資産の範囲が違う

 流動比率も当座比率も、ともに流動資産を扱うが、その範囲が異なる。

 当座比率は当座資産だけを分子に使うのに対し、流動比率は当座資産を含む流動資産全体を分子に使う。

 そのため、当座比率はより広い範囲の流動資産(特に棚卸資産やその他流動資産)を除外しているので、

 資金換金の確実性が非常に高い。

②厳密性の度合いが違う

 そのため、当座比率は流動比率よりも、企業の短期的な支払い能力を「厳密」に判断できる指標となる。

 よって、当座比率で資金繰り状況を判断すれば、流動比率で判断する必要はない。

当座比率で判断すれば流動比率で判断する必要はない!

 

(4)当座比率の目安

①100%以上

 100%以上が:理想的な水準とされ、短期的な支払能力に問題がないと判断される。

 しかしできれば、常に150%程度はあるように経営したい。

②100%未満

 支払能力に「懸念がある」と判断される。

 在庫への依存度が高い、あるいは財務の安全性が低い状況であると判断される。

当座比率は常に120%~150%は保てるように経営したい!