722.夢のような夢でない話⑤ AI/ロボット

2025年9月5日

最近話題になることも多いAIやロボット。

中小企業が活用するには資金や人材の問題などまだハードルが高いが、しかし確実に身近になって来ており、

あるとき気づけば真横に存在していた、という日もそう遠いことではない。

したがって、AIやロボットの動向にも関心を持っておくことは大事だと思われる。

そこで今回は、AI・ロボットについて紹介する。

 

5 AI/ロボット

(1)AIとは

そもそもAIとは「人工知能」と言われるが、人間の知的な活動をコンピュータで実現しようとする技術のことだ。

それによってコンピュータ自体が学習したり、推論や判断をするようになる。

AIは「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」の略であり、

コンピュータが人間のような知能や行動を模倣する技術の総称として使われている。

AIは大量のデータで学習し、パターンを認識し、理解し、そして推論や判断あるいは問題解決などを行う。

音声認識や画像解析、自動運転など、さまざまな分野で、AIは活用されようとしている。

そのAIの主な能力は次のようなものと言われている。

 ①学習する能力    →データからパターンやルールを学び取り、経験を積ませることでAIはドンドン賢くなっていく。

 ②推論・判断する能力 →学習した知識をもとに新しい結論を導いたり、適切な判断を下せるようになる。

 ③認識・理解する能力 →音声や画像などの情報から人間のように理解し、意味を捉えることができるようになる。

 ④問題解決する能力  →複雑な問題に対し、①~③の能力を活かして解決策を提示したり、また実行したりできるようになる。

これらの能力で、いま人間がやっている仕事をAIが奪い去るという恐怖論が巷に溢れている。

 

 【閑話休題】AIが人間を超える日

 AIが人間を超える日の最も有名な予測は、いまから20年後のレイ・カーツワイルが提唱する『2045年』だ。

 しかし、専門家によって意見は異なり、またAIの進化スピードによっても時期は変わる。

 AI研究の別の第一人者であるジェフリー・ヒントンは、

 今後5~20年以内に人間の能力を超えるAIが実現する確率が約50%とも予測している。

 

(2)ロボットとは

一方、ロボットとは、センサー・知能制御系・駆動系の3つの要素技術を持つ、物理的な「機械」と定義されている。

私たちはロボットといえばヒト型ロボットを連想しがちだが、必ずしもそうではなく、それぞれの目的を遂行するための

最適な形になる。

そしてAIロボットになると、「機械」であるロボットにAIが搭載され、ロボットがAIの学習機能によってより高度な

判断や行動ができるようになる。

そのAIロボットの特徴は次のとおりだ。

 ①学習機能 →センサーで収集した情報や過去のデータを分析し、それによって学習し、状況に最適な行動を自ら判断できる。

 ②自律性  →ヒトの指示で動くだけでなく、自ら状況を判断して行動できる。

 ③柔軟性  →予期せぬ状況や新しい課題にもある程度対応できる。

そのようなAIロボットはさまざまな業界で、次のように活用されていたり、またこれから活用されようとしている。

 ①製造業  →組立作業や検査作業など、精密で反復的な作業をAIロボットで効率的に行う。

 ②医療介護 →患者の介助や手術アシスタントなどにAIロボットを活用し、人手不足の解消や高度な医療をサポートする。

 ③サービス業→接客や案内、清掃などにAIロボットを活用し、人手不足の解消や顧客満足度の向上を図る。

 ④家庭   →家事代行や見守りあるいは話し相手などをAIロボットが行い、生活の質がより向上する。

いまは人手に頼っていることもAIロボットが取って行えるようになる!

 

(3)AI・ロボットの将来

AI技術進化とロボット工学の進展によって、AIロボットの性能はますます向上する。

将来的には高度な判断や行動もAIやロボットで可能となり、私たちの生活をより豊かにしてくれるであろう。

また体にキツイ業務は、もっともAIロボットが代わって行う分野となり得る。

 

(4)AI利用のコスト

AI利用の大きな問題は「コスト」だ。

いまは開発規模・AIの種類・システム連携などによって、AIコストは大きく変動し、一説には100万円~3000万円超と

いわれている。

たとえば、AIチャットボットならば数十万円~数百万円、需要予測システムや音声認識システムならば数百万円〜数千万円、

大規模な独自開発システムならばさらに高額となる。

一方、既存のSaaS型AIツール(*)だけの利用にすれば、月額数万円からの導入も可能といわれている。

(*)SaaS型AIツールとは、クラウドで提供されるソフトウェア(SaaS)にAI技術が組み込まれたサービスのことである。

 

■AIの種類と費用相場(一例)

 ①AIチャットボット     :  50万円~ 200万円

 ②音声認識システム      : 100万円~1000万円以上

 ③需要予測システム      : 300万円~ 600万円

 ④画像認識システム      : 数10万円~2000万円以上

 ⑤生成AIシステム(独自開発) : 100万円~3000万円以上

 *これらの金額はあくまでも一例であるが、AIロボットになるとこれにロボット(ハード)費用が必要となる。

 

(5)AIコストを左右する主な要因

では、どのようなことがAI利用コストを大きく左右するのだろうか。

 ①開発規模とその複雑さ

  単純な機能であれば、費用は安くなる。

  しかし、複雑な機能や高度な連携、独自仕様を求めれば求めるほど、費用は高くなる。

 ②データ収集とアノテーション費用

  質の高い、特殊なデータ準備には費用に加えて、データ収集に時間がかかる。

  特にユニークなデータを収集するには特に時間がかかる。

  *アノテーションとは「注釈」を意味し、IT分野、特にAIの機械学習において、画像・音声・テキストなどのデータを

   AIが理解できるように意味のある情報(タグやメタデータ)を付与する作業のことを指す。

   このアノテーションによって作成されたデータは「教師データ」と呼ばれ、AIが学習するための不可欠なデータとなる。

 ③AIモデル開発・トレーニング費用

  AIモデルの性能を高めるための費用だ。

  特殊な分野であればあるほど、この費用も高くなる。

 ④システム開発・統合費用

  既存システムとの連携やUI/UXの設計、実装にかかる費用で、連携が多ければ多いほど費用は高くなる。

  *一般的に「自動」と求める声が多いが、自動にという言葉のウラには、必ず多くの規則(制約)と連携を必要とする。

 ⑤運用・保守費用

  システムの継続的な運用するには、運用サポートや保守、改善などの月次費用が発生する。

 ⑥既存ツールの利用か独自開発か

  既存のSaas型AIツールを利用すれば初期費用は抑えられる。

  しかし、個別ニーズに拘ると独自開発になり、イニシャルコストは高額になる。

 

このように上げると、AIを活用するには途方もない費用が掛かると思われるかもしれない。

しかし、これをヒトがやるとなれば、給料・残業代・賞与、さらに福利厚生費や定期昇給などが必要となり、期間費用を計算すると

それ以上かかり、そのうえ病気や退職などのリスクもある。

そこまで考えるとAIは意外とコスト的には見合うことになり、かつ今後もっと普及すればもっと安価になっていくと思われる。

総合的に考えればAI費用は高くない?!

 

(6)AIコストを抑えるためのポイント

では、どのように考えれば、逆にAI利用コストは安く抑えられるのだろうか。

 ①導入目的を明確に

  どこでAIを活用したいのか具体的な目的を明確にすれば、AI化するところが絞られ、無駄な機能が省けるので、

  コストダウンにつながる。

 ②既存システムも活用

  まず最初に、自社で導入しているツールでAI機能を活用できないかを検討する。

  そうすれば、その分、コストダウンにつながる。

 ③SaaS型ツール(パッケージ)を利用

  パッケージ化されたSaaS型のAIツールを導入すれば、当然のことながら、初期費用は抑えられる。

 ④段階的な導入(PoC)

  一度のすべてをAI化すると考えないで、PoC(実証実験)から始める。

  そして効果を確認しながら、段階的に導入を進めば、無駄が省けてコストダウンにつなげる。

  *PoC(プルーフ・オブ・コンセプト:Proof of Concept)とは、新しいアイデアや技術・コンセプトの実現可能性や

   効果を検証するための「概念実証」プロセスのことをいう。「ポック」とも呼ばれる。

   本格的な開発や導入に進む前の段階で行い、小規模な試作や実験を通じてアイデアが技術的に実現できるのか、期待される

   効果が得られるかを確認することを目的としている。これによって開発リスクを低減し、無駄なコストや工数が削減できる。

 

 

 

AI・ロボットもいずれは避けられない課題だ。

いまから組織に関心を持たせておくことが肝心だ。