717.目標利益の見直し
2025年8月2日
国会ではまだ騒ぎが続いているようだが、米国との相互関税は15%で合意し、トランプ大統領も大統領令に署名した。
しかしこのように、トランプ関税、物価高上昇、人件費アップの要請、人員不足、続く円安基調などで経営を取り巻く環境は
「コスト高」を促すものとなっている。
そのような中
経営計画書で設定した『経常利益』は本当に適正なのか!?
一度、確認してみる必要はあると思われないだろうか。
そこで今回は「本来設定すべき目標利益額の算定の考え方」について考察する。
1 本来設定すべき目標利益額算定の考え方とは
来期に設定すべき「目標利益額」の元になるものとして、次のようなものが挙げられる。
①来期に蓄積したい事業資金
これは「内部留保」ともいい、事業資金として貯めたい金額だ。
②来期の借入金返済総額
借入金の返済は手元資金から行うが、その原資は営業活動で生み出した利益だ。
したがって、借入金がある場合は来期の利益に組み込まなければならない。
③来期の納税予想額
法人税等の納税も手元資金から行うものだ。
したがって、納税資金も来期の利益に組み込まなければならない。
④来期の減価償却費
減価償却費は損益計算書で費用と計上し、利益算出の際には減算されているが、
他の費用とは違い、実際には手元資金から支出されない。
したがって、減価償却費は来期の利益を考えるにあたっては減額できる金額となる。
この4項目を加算減算すれば、本来設定すべき『目標利益額』を求めることが出来る。
『目標利益』は「内部留保+借入金返済額+納税予想額ー減価償却額」で求められる!
2 目標利益額の算定
たとえば、来期、増やしたい事業資金が100万、借入金返済額が200万、納税予想額が150万、減価償却費が120万
だったとする・・。
すると、その合計は、100万+200万+150万-120万で『330万円』となる。
この330万円が来期に設定すべき『目標利益額』となる。
3 必要限界利益額の算定
では、来期必要な限界利益額はどのようにして求めればよいのだろうか?
それは、目標利益額に「固定費」と呼ばれる、昇給予定込みの人件費やその他経費を加えれば、『必要限界利益額』が算定出来る。
なお、人件費には給与・賞与のほか、社会保険などの法定福利費が含まれるので、注意が必要だ。
現在は人件費のアップが世間から求められているので、どうしても増額せざるを得ない。
また固定費も物価高のおり、基本的には増額となる。
これらが経営を圧迫している要因だ。
たとえば、その人件費総額が2000万、その他経費が500万とすれば・・
それらに目標利益額330万を加えると、必要限界利益は2500万+330万で、『2830万円』となる。
目標利益を得るために目指すべき『必要限界利益額』は「目標利益+人件費+固定費」となる!
4 必要売上高の算出
ここまで来れば、必要限界利益額を「目標限界利益率(粗利益率)」で割算すると、『必要売上高』が算出できる。
たとえば、目標限界利益率が40%であるのであれば・・
2830万÷40%で『7075万円』が必要売上高となる。
必要限界利益を目標限界利益率で割算すれば、目標利益を得るための『必要売上高』となる!
これをすでに作成した経営計画書の売上高と比較すると、その経営計画書の妥当性が確認できる。
もし、経営計画書の売上高の方が低ければ、売上原価やその他固定費など下げ『本来設定すべき目標利益』に近づける必要がある。
削減すべき目標額とその実行策などを考え『本来設定すべき目標利益』が達成できるようにする。
5 本来設定すべき目標利益額を達成する考え方
本来設定すべきの目標利益を達成するには、次の4つの方策がある。
(1)売上高を増やす。
(2)売上原価(直接原価あるいは変動費)を下げる。
(3)人件費(法定福利費を含む)を下げる。
(4)固定費(その他経費)を下げる。
たとえば、上記の例で、本来設定すべき目標利益が『330万円』で、いまの経営計画上の利益が『200万円』あったとする。
いまの経営計画上では次のようになっている。
売上高『6750万』、売上原価『4050万』、人件費『2000千万』、その他経費『500万』、経常利益『200万』
(1)売上高を増やして本来設定すべき目標利益額330万円を達成する場合
これは上記で説明したように、売上高6760万円を7075万円にしなければならない。
つまり、現在の経営計画上の売上高を4.7%(=7075万÷6760万)を増やす方策が必要となる。
具体的には市場深耕か、新商品開発か、新市場開拓などで戦略を考える必要がある。
(2)売上原価(直接原価あるいは変動費)を下げて本来設定すべき目標利益額330万円を達成する場合
これは売上高が6760万円と同じで、限界利益を2830万円にするということだから、売上原価を3930万円に抑えなければ
ならない。
つまり、売上原価率を60%から58%へ『2%下げる』ということである。
具体的には在庫をより徹底管理し、仕入を抑えなければならない。
(3)人件費(法定福利費を含む)を下げて本来設定すべき目標利益額330万円を達成する場合
経常利益を130万円増やせばよいので、人件費を130万円抑えれば良いことになる。
つまり、月次給与・賞与等で年間130万円下げることになる。
しかし、いまの時勢、従業員給与等を下げることはできない。
したがって具体的には役員報酬を月額10万円ほど下げることになる。
(4)固定費(その他経費)を下げて本来設定すべき目標利益額330万円を達成する場合
この場合も経常利益を130万円増やせばよいので、その他経費を130万円抑えれば良いことになる。
つまり、何某らの経費を月額約10万円下げることになる。
具体的には具体的な経費科目ごとに削減額を設定し、削減方法を練り月次管理を行うことになる。
現実的はこの4つの方法を組み合せて、本来設定すべき目標利益額を達成することになるが、
ひとつの王道は売上原価率を下げることである。
これは自社の収益体質を根本的に改善することになり、統計的にも優良企業と呼ばれる企業は同業者と比較して
圧倒的に売上原価率は低い。
優良企業は同業者と比較して限界利益率が圧倒的に高い!
また人件費もますます大きな課題となる。
人件費は人的に分類すれば、役員・従業員・その他に分類できるが、法定福利費も同様に分類できる。
今後、柔軟に人件費対策を考える上でも、そのように分けた上で、労働分配率も同様に、全体・役員・従業員・その他ごとに
把握したいものだ。
労働分配率は全体・役員・従業員・その他ごとに把握する!
なお、外注費は制度会計上は製造原価に属するが、管理会計上では人件費に入れて考えるやり方もある。
その根拠は、諸事情が許せば本来自社でやるべきことを外注に出しているので、パート・アルバイトなどと同列に考えることも
一定の合理性があるからだ。
経営計画は自社の進むべき道筋を示している。
常に経営計画を活かすためにも、その道筋をチェックすることも大事なことである。